第462号コラム:舟橋 信 理事(株式会社FRONTEO 取締役)
題:「防犯カメラとデジタル・フォレンジック、プライバシー影響評価について」

近年、不法行為の抑止やトラブル発生時の早期対応及び防災などを目的として、大規模集客施設や店舗、鉄道駅構内等の公共空間及び商店街等の街路に、施設管理者が防犯カメラ(監視カメラを含む。)を設置している。防犯カメラの2015年の国内年間出荷数量は、58万6千台(2016年版のJEITA調査統計レポートによる。)であり、年々増加していることを考慮すると、公式統計はないが数百万台の防犯カメラが設置されているものとみられる。

当研究会では、これまで防犯カメラ画像に関するデジタル・フォレンジックを取り扱ったことはないが、現在、防犯カメラの画像鑑定は犯罪捜査の重要な手段となっていることから、関連する話題を幾つか取り上げたい。

画像に関するデジタル・フォレンジックでは、容疑者の顔や歩容の異同識別、行動把握、逃走経路の把握などが主なものであると思われる。

デジタル・フォレンジックに当たって、設置されている防犯カメラにはアナログカメラやIPカメラなど、新旧様々なものがあり、更にメンテナンスの状況や設置場所の影響を受けて、画質の悪いものも含まれていることから、暗闇・逆光・霧などに対応する画像鮮明化、量子化ノイズなどの除去、ボケの復元、画像強調及びカメラ間の色補正など様々な画像処理が行われる。

また、人物特定のため、防犯カメラで撮影した顔画像から顔認証データを抽出し、対象者の顔認証データとの比較を行い、顔認証データの類似度の高い対象者を抽出する顔認証システムも実用化されている。

先般改正され、本年5月30日から施行される改正個人情保護法(以下「法」という。)においては、顔画像や顔認証データ等の身体特徴に係わる情報も、個人情報として明確化されたことから、店舗等に防犯カメラを設置する際には、情報流出のリスク評価を行うなど、プライバシー影響評価を実施することが必要となって来ている。

店舗に万引き防止を目的とした防犯カメラを設置する場合、個人情報保護委員会の「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&Aなどから、次の点に配慮する必要があるものと思われる。

①利用目的の本人への通知・公表について:防犯目的のみのために撮影する場合は、法第18条第4項第4号に基づき利用目的の本人への通知・公表は不要とされるが、不法行為の抑止のためにも防犯カメラが作道中であること店舗内に掲示するなどの措置が望ましいとされている。

②万引きの前歴のある人物の顔画像等(要配慮個人情報)を防犯カメラで取得する場合、本人の同意を得る必要があるか:法第17条第2項第2号の財産の保護に必要であって本人の同意を得ることが困難な場合に該当するものと思われることから、本人の同意を得る必要はないものと思われる。

③防犯カメラで記録された顔画像等は個人情報データベースに該当するか:本人が判別できる映像情報は個人情報に該当するが、特定の個人の検索可能なように体系的に構成されていなければ、個人情報データベースには該当しない。

顔画像等を体系的に構成して個人情報データベースを構築した場合は、法に基づく適切な取り扱いが必要である。

防犯カメラでは、個人情報や要配慮個人情報を取り扱うことから、個人情報の情報流出リスクの低減を図る必要がある。

一般社団法人日本画像認識協会「次世代ネットワーク型カメラのプライバシー保護研究専門委員会」では、個人情報を取り扱うシステムの導入等に際してプライバシーへの影響を事前に評価する管理手法、プライバシー影響評価(PIA)手法等について、防犯カメラを対象とする調査研究を行っている。調査項目としては、①対象システムに関するリスク分析、②業務フローに関するリスク分析、③評価基準の作成、④影響評価報告などであり、プライバシー影響評価マニュアル等を会員向けに公開している。

【著作権は、舟橋氏に属します】