第704号コラム:手塚 悟 理事(慶應義塾大学 環境情報学部 教授)
題:「コロナ禍での慶應義塾大学サイバーセキュリティ研究センター行事『第11回サイバーセキュリティ国際シンポジウム』について」
2015年8月に、慶應義塾大学は全塾研究センターとして「サイバーセキュリティ研究センター」を設立しました。その記念行事として2016年2月に開催したサイバーセキュリティ国際シンポジウムを皮切りに、毎年シンポジウムを行ってきました。昨年10月に「慶應義塾大学サイバーセキュリティ研究センター行事『第11回サイバーセキュリティ国際シンポジウム』を開催しましたので、この内容についてご紹介します。
今回のシンポジウムは昨年に引き続いて、世界のサイバーセキュリティに関する大学連携組織であるInter National Cyber Security Center of Excellence(INCS-CoE)と、米国の非営利団体であるMITREが共同開催者となり、開催規模も今まで以上に大きくして実施しました。開催期間は5日間です。昨年と同様にコロナ禍での開催となりましたので、慶應三田キャンパスでの開催ではなく、オンラインでの実施となりました。
今回のシンポジウムのテーマは、「デジタル社会保障からデジタル安全保障まで:安全・安心を実現するためのトラスト」とし、自由闊達な議論を行いました。
一国や一企業が単独で解決できるものではないことを議論しました。 サイバー分野におけるマルチステークホルダー・ソリューションの必要性に応えるため、like-mindedな信頼できる産学官のリーダーが一堂に会し、社会保障レベルから安全保障レベルに至るまで、デジタル・トラストをいかに構築するかを検討しました。また、本シンポジウムでは、社会的・国家的セキュリティの観点から、グローバルなデジタル・トラスト・サービスに向けた実行可能な提案と具体的なソリューションについて議論しました。 議論のテーマは、DFFT(Data Free Flow with Trust)、IMRT(International Mutual Recognition of Trust)、MCAC(Multilateral Cybersecurity Action Committee)の提案、日本の新しいデジタル庁、さらに5G、AI、プライバシー、IoTなどの技術を用いた業界のベストプラクティスなどでした。
今回のグローバル・バーチャル・オンライン・シンポジウムでは、5日間を通して基調講演やパネルディスカッション、専門的な講演やパネルを行い、社会保障や国家安全保障のベストプラクティスについての深い分析と洞察を行いました。また、INCS-CoEパートナーが共有する国際的な共同研究・政策・教育項目の議論などを通じて、日本、米国、英国、EU、オーストラリア、イスラエルなどの主要な国・地域間の信頼関係をどのように実現するかについても議論しました。 おなじみの顔ぶれに加えて、このバーチャルな形式を使って、グローバルなコミュニティを拡大し、これらの重要なサイバーセキュリティのトピックをデジタルで育成することができました。 バーチャルな雰囲気の中でのエキサイティングな議論をすることができました。グローバルなオンライン視聴者に対応するため、基本的なスケジュールは以下の通りとしました。
開催日は、1日で使える時間が約3時間で開催規模も大きくしましたので、昨年と同様に、2021年10月25日(月)~29日(金)の5日間開催いたしました。
プログラムの詳細については下記URLをご覧ください。
第11回サイバーセキュリティシンポジウム
日米英EU豪等のスピーカやパネリストにご参加いただくために、リアルタイムでオンラインを実施するには、下記の時間帯で行うことにいたしました。
地理的な距離を超えるオンラインであろうとも回避できない点として「開催時間」の問題があり、特に日本は夜になるので、時間調整が大変でありました。
前回と同様に、今回もオンライン開催をして非常によかった点は、当然のことではありますが、世界中の方にご参加いただけたことです。以前の慶應三田キャンパスでの開催では約500人規模でしたが、これがオンライン開催では約1500人規模の開催となりました。また、参加いただいたスピーカやパネリストの方々も、今までは約70人であったものが約150人となりました。さらに、スピーカやパネリスト等の同意を得て、アクセス制御付きYouTubeで1月初旬までの約2か月間、自由にシンポジウムを視聴できるようにしたため、当日参加できなかった人も見ることができ、好評でありました。このように日本にわざわざ来ていただかなくても気楽に出席できるというオンライン開催の利点が、改めて実証できたと考えます。
次回の第12回サイバーセキュリティ国際シンポジウムは、現在の予定では10月中旬に開催しますが、コロナの収束状況に応じて、以下の2パターンを検討しています。
1.オンライン開催
2.現地とオンラインのハイブリット開催
つまり、以前のような慶應三田キャンパスのみでの開催には戻らないと考えています。これもニューノーマルと言えるのでしょうか。
今後も、サイバーセキュリティ国際シンポジウムは続けて行きますが、開催形態は変容していくと考えられます。ただし、日米欧の同時オンライン開催においては、どのようにしても「開催時間」の設定を動かすことができない点について、改めて認識させられた気がしています。
最後に、コロナの影響は人類にとって、今までにない試練ではありますが、この試練を特にITの力で乗り越えたところに、新世界が待っているように思えてなりません。
【著作権は、手塚氏に属します】