第718号コラム:熊平 美香 監事(一般財団法人 クマヒラセキュリティ財団代表理事)
題:「アンラーン」

アンラーンとは、学びほぐしのことです。アンラーンとは、過去の経験を通して得た学びを手放すことでもあります。過去の成功体験で培った成功法則を手放すことも含まれます。変化の激しい時代には、新しい学びを自分のものにする事と同じ位、アンラーンが求められるようになりました。そこで、リフレクションの普及啓発の一貫で、アンラーンの実践方法を紹介する活動を行っています。

皆さんも、こんな経験はありませんか。
・これまでのやり方を続けていたのでは、これまで通りの成果が出せないような気がする。
・これまでのやり方が通用しなくなってきていると感じる。

私たちは、アンラーンの必要性に気づく力を持っています。しかし、多くの場合は、その気づきに意識を向けないようにしています。そして、もうこれ以上、今までのやり方を続けていても意味がない状態になった時に初めて、変化を受け入れます。世の中の変化がスローな時には、このやり方は合理的だったのかもしれませんが、今日のように、大きな変化の波が次々と訪れる時代には、自らの意思でサクサクとアンラーンを推し進めることが大事です。

アンラーンには、6つのステップがあります。
①『過去の学び』のメタ認知
② アンラーンの可能性を想像
③ 『恐れの感情』のメタ認知
④ 選択肢のメタ認知
⑤ アンラーンのためのビジョン形成
⑥ アクションプランの策定

事例を使って、6つのステップを紹介します。

① 過去の学びのメタ認知
【問い】
アンラーンが必要かもしれないと思う「ものの見方/行動様式」はありますか。これまでのやり方では、これまでのような成果・結果を出せないと感じることはありますか。

【答え】
意見 これまでは、計画に従い行動し、PDCAを徹底することで、成果をだしてきた。しかし、予測不能な時代になり、計画づくりに苦労するようになってきた。

過去の経験
これまで、数多くの成果を出してきた。成果を出すために、常に心がけているのはPDCAを徹底すること。計画は、半年、3ヶ月、1ヶ月、1週間、1日の単位で、明確にし、行動する。計画がしっかりしているからこそ、進捗管理も徹底。

経験に紐づく感情
計画があると(安心)
成果がでると(うれしい)

価値観
成果、結果、責任、トラブルなし

② アンラーンの可能性を想像してみましょう
【問い】
アンラーンが必要かもしれないと思う「ものの見方/行動様式」をどう変えてみますか。これまでのやり方では、これまでのような成果・結果を出せないと感じることを、新しいやり方に変えてみることを想像してみましょう。

【答え】
意見 計画の質よりも、まず試してみることが大事かもしれない。

経験
変化の激しい時代に、これまでのように計画の精度を高めるために尽力しようとしたが、前提がどんどん変わるので、計画を完成させることができず、困惑した。計画がないと、行動できないという考え方を手放さないと、アクションが始められない。

感情
(計画が完成できず)困惑
(計画なしで行動することを考えると)不安

価値観
成果、結果、責任、トラブルなし

③ 恐れの感情のメタ認知
【問い】
これまでの「ものの見方/行動様式」を手放すことを想像すると、何が不安(心配)ですか。『恐れの感情』の原因は何でしょうか。

【答え】
精緻な計画を持たずに行動することで、良い成果を出すことができないのではないかという『恐れの感情』がある。

④ 選択肢のメタ認知 現状維持 vs アンラーン
【現状維持】
これまでは、計画に従い行動し、PDCAを徹底することで、成果をだしてきた。しかし、予測不能な時代になり、計画づくりに苦労するようになってきた。
【アンラーンの可能性】
計画の質よりも、まず試してみることが大事かもしれない。

⑤ アンラーンのためのビジョン形成
アンラーンの目的は、幸せになること!ビジョンを形成し、クリエイティブテンション(ビジョンと現状とのギャップを埋めようとする強い内発的動機)を高めることで、アンラーンを楽しむことが可能に成ります。

【アンラーンするメリット】 アンラーンすることで得られるものは何ですか。
計画がなくても、仕事を前に進める力。

【アンラーンしないデメリット】 アンラーンしないことで失うものは何ですか。
(これまでの経験で極めた仕事術 PDCAの徹底を通して) 成果を出し続けること。

【ビジョン形成】
アンラーンに取り組むと、どんなよいことがあるのでしょうか。
あなたは何を手に入れるために、アンラーンに挑戦するのですか。

変化の激しい時代にも、これまで通り、成果を出す有能な人材で有り続けるために、アンラーンに挑戦しよう。

成功のポイント!
アンラーンを成功させるために鍵を握るのが、ビジョンです。何のためにアンラーンに取り組むのかを明確にして、アンラーンの実践を始めてください!

⑥ アクションプランの策定
【最初のステップ】最初のステップとして、何に取り組みますか。
現在抱えている仕事の中で、一番不確実性が高いプロジェクトについて、計画よりも、仮説に意識を向けて行動し、その結果を振り返る。

【成功の評価軸】最初のステップにおける成功の評価軸は何ですか。
・仮説が明確である。
・仮説に対する振り返りが明確である。
・次の行動を、仮説に基づき決める。
・1ヶ月後に、活動全体を振り返り、計画を立てた場合との違いを言語化する。

【振り返りのタイミング】いつ、最初のステップのリフレクションを行いますか。
1ヶ月後

【最終ゴール】どのような自己変容が起きることが、最終ゴールでしょうか。
・状況に合わせて、効果的な計画の粒度を柔軟に選択できる。
・変化の激しい時代の実行力の高め方、成果の出し方に必要な“PDCA”
(多分、アジャイル的な仕事の仕方)の技を持つ。

成功のポイント!
アンラーンは、スモールステップで行って下さい。少しずつ、成功体験を積むことで、新しい世界を自分のものにすることが可能になります。

ぜひ、皆さんも、アンラーンが必要だと感じたら、例に沿って、アンラーンを実践してみてください!

【著作権は、熊平氏に属します】