第776号コラム:手塚 悟 理事(慶應義塾大学 環境情報学部 教授)
題:「G7デジタル大臣会合にて行った「International Mutual Recognition for Achieving DFFT」のデモンストレーションの意義」

2019年1月に、スイスのダボスで開催されましたWorld Economic Forumにおいて、故元安倍首相が、Data Free Flow with Trust (DFFT)を世界に発信しました。これは、我が国にとっては珍しいことで、世界に先駆けてデータの重要性を謳ったものでした。

このDFFTとは、「自由と信頼」のルールに基づくデータ流通圏と国際相互連携を示しています。特に、2019年2月に発効された「Japan-EU Digital Trade」、2019年12月に公布された「Japan-US Digital Trade」、さらに2021年1月に発効された「Japan-UK Digital Trade」により、その中でDFFTを実現していくことになっています。

ここで特に大事な項目は、「International Mutual Recognition」です。我が国が、EU、US、UKとのDigital Tradeを実施するために、各国とコミュニケを交わしましたが、そこでの重要な項目は、electronic Authenticationとelectronic Signatureでした。これらの機能を使って国際間での相互承認をすることで、DFFTの「T」を実現するからです。

そのためには、日本とEUの間で、インボイスや契約等の電子データをやり取りする時に、「なりすまし」と「改ざん」をいかに防ぐかが重要となってきます。それを実現するのがelectronic Authenticationとelectronic Signatureです。この機能を実現するためのプラットフォームを各国で整備し、これをトラストサービス基盤と呼びます。この基盤を使って、DFFTを実現するために、「International Mutual Recognition」を構築して安心安全なデータ流通が可能になると考えています。

そこで、G7デジタル大臣会合に向けて、上記のトラストサービス基盤を使ったトラストアプリケーションサービスのデモンストレーションを行うことで、「International Mutual Recognition」を加速することを進めました。その結果、EU Commissionと我が国で共同プロジェクトを実施しました。トラストアプリケーションとしては、昨今非常に重要視されているGX (Green Transformation)とDX (Digital Transformation)を組み合わせた「Carbon Neutral CO2 Emission Management」を題材にデモンストレーションを行いました。G7デジタル大臣会合での反響は大変大きく、その結果、G7で我が国に新組織IAP (Institute Agreement for Partnership)を立ち上げることに大きく貢献することができました。

今後の「International Mutual Recognition」の展開は、2023年G7のホスト国である日本が主導的立場で進めていくことになります。つまり、我が国がIAPの発展に極めて重要な役割を担うものと考えます。さらに、今年のG20ホスト国であるインドも同様の考えを持っており、G20さらにはグローバルサウスにも広げていこうとしていることから、「International Mutual Recognition」は世界規模でのテーマになってきています。

「International Mutual Recognition」は、G7、G20さらにはグローバルサウス、ASEANの領域にも広がると共に世界規模での取り組みへと発展していくので、我が国が主要な立場で貢献することで、我が国の産業競争力が益々高まることを期待しています。

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