第784号コラム:舟橋 信 理事(株式会社FRONTEO 取締役)
題:「民のかまど

 小学生の頃に習った大阪市歌(大正10年制定)は、重厚な曲で
印象が強かったのか、今でも鮮明に覚えている。
 歌詞の1番に「高津の宮の昔より、よよの栄を重ねきて、民のかまどに
立つ煙・・・」とある。「高津の宮」は、仁徳天皇が皇居とした難波高津宮
であり、「民のかまどに立つ煙」は、仁徳天皇が高殿から国を見渡すと、
民の家々の竈から煙が立っていないのを見て民の窮乏を知り、3年間
課役を止めた事績に由来する。
「民のかまどから立つ煙」が国民の経済状況の指標(エビデンス)であり、
「3年間課役を止める」ことがエビデンスに基づく政策であろう。

 次に、エビデンスに基づく少子化対策について一言。
 政府における少子化対策は、いわゆる1.57ショック、1989年の合計
特殊出生率が1.57となったのを契機として1990年代から約30年間、
「エンゼルプラン」など様々な少子化対策がなされてきたところ、出生数の
減少に歯止めがかかっておらず、また、合計特殊出生率は2005年に1.26
まで落ち込み、その後、緩い上昇傾向を示したが、近年は漸減傾向にある。
 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」
には、「総人口は50年後に現在の7割に減少し、65歳以上人口がおよそ
4割を占める。」とあり、少子化対策は喫緊の課題である。
 昨今、異次元の少子化対策が話題になっているが、是非とも30年間
蓄積したエビデンスに基づく政策を立案し、実行してもらいたいものである。

【著作権は、舟橋氏に属します】