第810号コラム:西川 徹矢 理事(笠原総合法律事務所 弁護士)
題:「2024年 大感動」
私は、ここ10数年来、松の内の1月10日前後に、企業幹部や関係団体等の親しい方々10人余りと小宴を囲みながら、「旧年を省み、新年を語る」場を設け、初春のひと時を楽しく過ごしてきました。ところが、今年は、元日に能登地震が発生し、そのうえ翌2日に羽田空港旅客機事故が発生し、正月気分が一気に吹き飛びました。地震に関しては、発生直後に報ぜられた被害情報が少な目だったためか、我が国の震度観測史上第7番目の震度7の被害とは言いながらも、公共施設や民間施設等の実際の財産的な被害報道の割には、やや人的な被害が少ないように感じられました。
また上記の年初予想分析では、一般国際情勢は、2年目のウクライナ侵攻の動向が十二分に定まらず、糅てて加えて、昨年再燃したハマス・イスラエル紛争が、何処まで継続し国際政治に影響を与えるかが一番の焦点となっていました。
なお、議論の中身は省略しますが、この後は、航空機事故の話題に戻り、しかも主テーマは、JALの旅客と乗務員の危機管理事態対応時の素晴らしい行動とその結果に移りました。
日頃の訓練で練度を上げ、またこれまでの事案処理として積み上げられた事故時の手順を完璧にやりとげられた結果として、奇跡的に1人の犠牲者を出すこともなく、JALの乗客乗員379名全員が無事救助され生還した点に賞賛が集約されました。
特に、この点では、乗務員全員の持ち場における冷静沈着な対応や相互の信頼と支え合い等、この奇跡的な事例の存在が危機管理事案例の中で一番の模範例となり、今後にこの事例から多くの教訓と安全基準的な知恵をもたらしてくれるとの意見が多く、併せて、今回の教訓の中には、広く現代の高度社会における緊急事態に対処すべき基本的かつ有効なヒントや知恵に繫がるとの期待感、意見も多く、これからは人類の知恵として検証すべきものであるとの感想もありました。
私も、公務員時代の半ば近くを危機管理業務の一員として現場や指揮所からそれなりに実働経験を積み重ねながら勤務したことがありました。当時の先輩方からは、「現場で最後に力を発揮するのは、訓練を通じて身についたものだけだ」とか、「実際に訓練でやったことしか咄嗟の場面では役に立たない」等と厳しく教わり、後日これを身につけるべく努力したことが懐かしく思い出されます。
皆さんも、機会があれば、是非、現代社会人としての積極的な対処能力を培い、社会貢献に資する一環として、各種の訓練等に参加し、経験を積み上げるとともに、不幸にして今回の事例のような危機管理事態に遭遇した場合には、その基本素養を大いに活用し、現場における、すべての関係者や被災者と一丸となって自他の危機を回避・克服されることによって、大いに社会貢献をなされることを心からお願いしたいと思います。
本年の正月は、その意味では、改めて、多くの方々と同様に、心に深くかつ心揺さぶられる「2024年の大感動」とその実践のために具体的な宝物を掘り起こそうとする気持ちを鼓舞していただきたいと思います。
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