コラム第898号:「銃声検知システムShotSpotterと刑事手続における技術的中立性」

第898号コラム:尾崎 愛美 理事 (筑波大学ビジネスサイエンス系准教授)
題:銃声検知システムShotSpotterと刑事手続における技術的中立性

銃声検知システム「ShotSpotter」は、米国カリフォルニア州に拠点を置くSoundThinking社(旧ShotSpotter社)が提供する銃声検出システムであり、公共施設、街灯、商業ビル、ショッピングモール、アパートメント、携帯電話基地局等にセンサーを配備(1マイル四方の範囲に20~25個程度)することにより、銃撃が起こった場所を60秒以内に特定するものである。センサーにはマイク、GPS、メモリ、処理装置、データ送信用のセル通信機能が内蔵され、トリガー音の1秒前から録音を開始し1秒後に停止する仕組みとなっており、センサーが反応すると訓練を受けた専門家が音声の発生源と発砲音の有無を判定する。警察はスマートフォンまたは指令室経由でアラートを受信し、30~45秒以内に現場に到着するようになっている。ShotSpotterは、全米90を超える都市で導入され、報道によれば、ShotSpotterを導入したオークランド市では銃撃事件の件数が急減したという。

しかしながら、ShotSpotterの精度とその技術的中立性には深刻な疑義が呈されている。以下では、具体的な事例を紹介することとしたい。

コラム第895号:「Health ISAC Japanの設立、および「ヘルスケア」分科会との連携について」

第895号コラム:江原 悠介 理事(PwC Japan有限責任監査法人 リスクアシュアランス ディレクター)
題:Health ISAC Japanの設立、および「ヘルスケア」分科会との連携について

2025年9月に、国内のヘルスケア領域を対象としたサイバーセキュリティの教育・啓発団体として(一社)Health ISAC Japanが活動を開始しました。

この団体は医療・介護・薬局、製薬・医療機器、ウェルネス等、我々が日本内で心身の健康を維持する上で必要となる各種領域を維持するためのセキュリティという問題系を市場的な競争領域でなく、社会福祉的な公共性のある協調領域として捉え、これからの未来につなげる活動を行うことを目的としています。
また、この団体は国内病院のほとんどが深刻な経営赤字を恒常的に抱えており、セキュリティという領域に投資できる病院などゼロに近いにもかかわらず、市場の論理に基づく営利活動を目的とした取組は行いません。医療を含む国内のヘルスケア領域はそもそもお金がなく、さらにそこでのセキュリティで商売するなどということは夢物語です。経済的な見返りを得るのではなく、公共的な恩返しこそが活動の軸です。