コラム第860号:「サイバー脅威インテリジェンスにおける人間と生成AIの相互補完関係」
第860号コラム:名和 利男 理事(株式会社サイバーディフェンス研究所 専務理事/上級分析官)
題:「サイバー脅威インテリジェンスにおける人間と生成AIの相互補完関係」
現代のサイバー攻撃は、その巧妙さと多様性から、従来のシグネチャベースの防御だけでは太刀打ちできない局面が増えています。企業や政府機関では、攻撃者の隠れた痕跡を早期に発見する「脅威ハンティング」に注力する中で、膨大なログデータやネットワークトラフィックから有効な手掛かりを抽出する作業が急務となっています。こうした状況下で、近年急速に進化を遂げた生成AIの活用は、まさに時宜を得た技術革新といえるでしょう。生成AIは、膨大なデータの中から微細なパターンを抽出する力と、人間の直感や経験に基づく判断力を補完し、サイバー脅威インテリジェンスの現場で大きな効果を発揮しています。
コラム第859号:「専門家の判断支援に必要な非連続的発見」
第859号コラム:守本 正宏 理事(株式会社FRONTEO 代表取締役社長)
題:「専門家の判断支援に必要な非連続的発見」
生成AIの話題が出ない日はないほど、生成AIの出現は世界に衝撃を与えた。生成AIは瞬く間に普及し、半導体や電力の急激な需要増加を引き起こした結果、経済や安全保障の領域にも多大な影響を及ぼしている。生成AIの普及は間違いなく我々の社会の発展に貢献し、同時にハルシネーションや著作権侵害の課題も浮き彫りにした。Pros & Consは全てのものに存在しているため、そのバランスを取りながらうまく社会実装していくであろう。
生成AIは、深層学習等の手法を駆使して、人が作り出すような文章や画像、音楽などのコンテンツを自動で生成する事ができる。あたかも人が考えたかのようなその振る舞いは、AIが人に近づいてきたかのような錯覚に陥る。さらに、人にしかできないと思われていた、人が望むアウトプットを的確に出してくれ、その結果には感動すら覚える。
コラム第858号:「慶應義塾大学開催の第14回サイバーセキュリティ国際シンポジウム『国家安全保障、経済安全保障、社会保障のためのデジタル・サイバー安全保障戦略』について」
第856号コラム:佐藤 慶浩 理事(オフィス四々十六 代表)
題:「不正行為の原因論と機会論~割れ窓理論(Broken Windows Theory)の引用可能版」
IDFコラム828号「日本の個人情報保護と米国のプライバシー尊重の違い」で「割れ窓理論」について触れ、機会があれば具体的な内容を紹介することにしていましたので、今回は、それについて紹介します。
組織におけるガバナンス構築の基礎となるのは、定められたルールを全員が順守する意識を持っていることですが、全員に順守の意識があっても、ルールへの違反は実際には起こり得ます。その要因は、「善意による違反」などいくつかありますが、そのうちのひとつに「違反障壁の低下」というものがあります。これは「割れ窓理論(Broken Windows Theory)」と言われています。
コラム第857号:「2025年はAI法元年になるか?」
第857号コラム:須川 賢洋 理事 (新潟大学大学院 現代社会文化研究科・法学部 助教)
題:「2025年はAI法元年になるか?」
2025年もAIに関する法制がいろいろと論じられる年になる。
まず、政府は昨年末から今年の始めにかけて、AIに関する法案を今度の通常国会に提出する方針を順次公表しており、その概要が少しずつリークされている。本稿執筆時で、従来から必要性が言われている「透明化」や「適切な研究開発」などのほかに、「悪質な事業者名を公表する」方針であることが報じられている。悪質とは、著しい人権侵害などを指すようである。
このような法を制定することになったのは、何と言っても欧州(EU)の「AI法」の影響が大きい。しかし、EUがこのAI法(当時は「AI規制法」という言い方をすることもあった)を制定すると決めた4-5年前の時点では、日本はEU同様の法規制を行うことを見送り、業界等の自主ガイドライン等で対応するという方針を立てた。その後に、Chat GPTを始めとする生成AIの爆発的な進化・普及が起こり予想外に速く一般社会や生活にもAI利用が浸透し、そんなことを言ってられる状況でなくなったことは容易に想像がつく。本家EUのAI法も、昨年の法案可決前に、急遽、生成AIに関する規程を追記した上で法律を通している。