コラム第873号:「厚生労働省の令和7年度「医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」案について」
第873号コラム:江原 悠介 理事(PwC Japan有限責任監査法人 リスクアシュアランス ディレクター)
題:「厚生労働省の令和7年度「医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」案について」
2025年3月に開催された、厚生労働省の第24回健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループで令和7年度版の「医療機関におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」の案が提出された。今回はこのチェックリストの更新のポイントがどこにあるかを考えたいと思う。
日本国内で医療DXに関する諸施策が本格的に開始された2023年に医療分野に関するサイバーセキュリティの規制強化が同時に行われたことは周知の通りである。医療DXというアクセルは、サイバーセキュリティというブレーキと一体になって設計されることで初めて安定的な仕組みとなる。
コラム第872号:「地方創生の取り組み」
第872号コラム:伊藤 一泰 理事(近未来物流研究会 代表)題「地方創生の取り組み」
【Episode1】
僕の少年時代の原風景は、秋田県北部の農村風景である。そのころ暮らしていた家の窓から見えていた印象的な風景は、春の田んぼと農作業をしている農家の人たちある。
3月までの長い冬が過ぎて、雪解けの4月になると、北東北にもやっと春がくる。まだ、風は冷たいものの「水温む季節」である。春の農作業は、牛馬を使った代掻き(しろかき)から始まる。なかなか言うことを聞かない牛馬をなだめすかせて、木製農具を苦労しながら操るお百姓さんの姿を見ていた。
そのうち「耕運機」なるものが登場した。ヤンマーやイセキなどの農機具メーカーが開発した画期的な農業用機械だ。農家の人たちにとっては仕事が随分と楽になって作業効率アップになったようだ。
コラム第871号:「物理的な「場」とバーチャルな「場」」
第871号コラム:石井 徹哉 理事(明治大学法学部専任教授)
題:「物理的な「場」とバーチャルな「場」」
1 最近、報道等でオンラインカジノが取り上げられることが増えてきています。オンラインカジノの関与者を日本の刑法により処罰するためには、犯罪が日本国内でおこなれたこと、「日本国内において罪を犯した」ことを必要とするのが原則です(刑法1条)。これを属地主義といいます。問題は、「日本国内において罪を犯した」とはどのようなことを意味するのか、どのように判断することになるのかということにあります。このことについて、学説もおそらく判例も、いわゆる遍在説との立場をとり、行為者の行為又はその結果のいずれかが日本国内において生じれば足りるという考えをとっているとされます。
コラム第870号:「翻訳された言葉としてのデジタル・フォレンジック」
第870号コラム:佐々木 良一 理事(東京電機大学 名誉教授 兼 同大学サイバーセキュリティ研究所 客員教授)
題:「翻訳された言葉としてのデジタル・フォレンジック」
本を読んでいて、うまい翻訳語だなと感心したり、翻訳語を作った人たちは苦労したんだろうなとしみじみ思ったりすることがある。
衛生などはSanitaryの訳であろうが名訳である。中国の思想家、荘子の庚桑楚篇に登場する『衛生』という言葉を「生命を衛る」という意味で行政用語として用いたものであるようだ。この使用を明治政府に具申したのは長與専斎であるといわれている。類似の翻訳語として、衛星がある。Satelliteの訳で何かを衛る星という意味だろう。衛星も衛生もなかなかの名訳だと思う。