コラム
コラム第819号:「サイバー空間の地政学リスクについて考える」
第819号コラム: 佐々木良一 理事兼顧問(東京電機大学 名誉教授・サイバーセキュリティ研究所 客員教授) ) 題:「サイバー空間の地政学リスクについて考える」 1.はじめに 近年「地政学」という言葉が良く使われるようになった。地政学(Geopolitics)とはwikipediaによると「国際政治を考察するにあたって、その地理的条件を重視する学問である」とされている。すなわち地政学は、地理的な要素(例えば、地形、気候、資源、交通路など)が国家の外交政策、安全保障政策、経済政策に及ぼす影響を分析し、理解することを目的としているようである。 地政学は、米中の対立やロシアのウクライナ侵攻の原因をうまく説明するのに有効であるという高い評価がある一方、学の名前に値しないエセ科学であるとか、地政学という概念を使わなくとも同様の説明は可能であるといった批判もある。
コラム第818号:「3層公開鍵の提案 - 本人・本モノ確認の信頼性向上に向けて」
第818号コラム: 辻井 重男 理事(中央大学 研究開発機構 機構フェロー・機構教授) 題:「3層公開鍵の提案 - 本人・本モノ確認の信頼性向上に向けて」 4千年とも言われる暗号の歴史上、コンピュータの普及に対応すべく、1970年代、革命が起きた。公開鍵暗号の数学的発明である。 公開鍵暗号は火薬の発明に匹敵? 未だに、暗号と言えば、秘匿用途のみが多くの人々の念頭 にあるようだ。ある科学史の本に、公開鍵暗号は火薬の発明にも匹敵する程の歴史的発明と書かれているそうだが、物理、化学や生物学分野の発明は、直観的に理解されやすいが、数学的発明は馴染み難い。
コラム第817号:「生成系AIによるロボコールと電話消費者保護法による規制」
第817号コラム: 湯淺 墾道 理事 (IDF副会長、明治大学 公共政策大学院 ガバナンス研究科 教授) 題:「生成系AIによるロボコールと電話消費者保護法による規制」 024年は世界的な選挙イヤーであり、世界の64ヶ国で国政に関する選挙が行われることになっている。その中には、1月に行われた台湾の総統選挙、3月に行われたロシアの大統領選挙のほか、11月に行われるアメリカの大統領選挙など、世界的に注目を集めるものが少なくない。アジアでは、2月に行われたインドネシア大統領選挙のほか、インド、パキスタン、バングラデシュ、韓国で国会議員選挙が予定されている。 その際、懸念されているのは、生成系AIを利用して生成された候補者等の動画像がネガティブキャンペーンや世論誘導のために大量にインターネット上(特にSNS上)に流布されることであり、早くも実際に生成系AIを利用した虚偽の情報が流布されるという事件が2024年1月23日に行われたアメリカ大統領選挙のニューハンプシャー州予備選で発生した。
コラム第816号:「クラウド時代に求められる暗号化消去」
第816号コラム: 上原 哲太郎 理事(IDF会長、立命館大学 情報理工学部 教授) 題:「クラウド時代に求められる暗号化消去」 さて新年度になりますと、多くの人が異動し、新しい組織での活動を始めます。そうでなくとも、この時期に新しいパソコンを使い始める方も多いと思います。そういう方に私がお勧めしているのは、「新しいパソコンを使い始める前に、そのストレージ(HDD/SSD)を暗号化しておきましょう」ということです。WindowsではBitLocker(Professional Editionの場合)または「デバイスの暗号化」(Home Editionの場合), macOSでは「ディスクの暗号化」という機能が利用できます。大切なのは「使い始める前」,つまり可能ならセットアップ前、もしそれが無理なら最初のアカウント作成などの設定をした後の出来るだけ早い時期、本格的にパソコンを仕事などの作業で使い始める前に、です。
コラム第815号:「IDFの第21期計画について」
第815号コラム: 植草 祐則 理事(IDF事務局長、NTTデータ先端技術株式会社 サイバーセキュリティ事業本部 シニアスペシャリスト) 題:「IDFの第21期計画について」 ようやく気温も上がって来ていよいよ春というこの時期、今年は花粉の猛威に薬も歯が立たず、涙目で過ごしている事務局長の植草でございます。 さて、事務局長に就任して約一年、様々な業務やイベントのノウハウを引き継ぐために前事務局長に並走して頂いていたのですが、いよいよ独り立ちすることになりました。 昨年5月のコラム第770号では「20期からは周囲の変化を先取りして当会で必要なものはより機動的に変化させるといった対応を進めて行きます。」と書かせて頂きましたが、これを実践することになります。