4/2(木)発信原稿:山田 晃 氏(情報処理推進機構(IPA)セキュリティセンター 調査役)
題:「教育現場におけるセキュリティの重要性」

 昨今、青少年を取り巻く事件や事故が増えつつあり、教育現場でも悩みの種になっているそうです。その中でも、特にインターネットや携帯電話を利用した事件は、見逃せないような内容となってきています。
 具体的にいえば、ブログやプロフの書き込み一つから波及した事件、これには傷害事件から恐喝、殺人未遂事件まで、かなり多種多様な事件が全国各地で起こっています。又、学校裏サイトと呼ばれる学校の非公式サイトは、生徒自身の手で運営されている場合もあり、その掲示板への実名を伴った誹謗中傷記事の掲載、それが基で退学したり、転校させられたり、自殺に追い込まれる児童まで出るなど、いわゆるネット虐めは、簡単には解決し得ない大きな問題の一つとなっています。

 昨年12月に出会い系サイト規制法が改正されました。警察庁のまとめからもわかるように、法執行機関の取り締まりが強化されたこともあり、事件の舞台が出会い系サイトから、これらブログやプロフ、学校裏サイト等の掲示板に移ってきていることが伺えます。事件を起こす側が悪いのは言うまでもありませんが、その原因を作っているのは、深く考えずに個人情報や顔写真、時には自分自身の猥褻な写真まで掲示板(特にプロフ)等に掲載してしまう少年少女達自身です。

 文部科学省の調査によると、2008年3月現在で確認されている学校裏サイトの数は、全国で38,000以上にのぼるとのこと。又、高校生の4割が携帯電話からインターネット上にプロフを公開しているとの実態も明らかになりました(2008年12月)。インターネットや携帯電話の高機能化、操作性向上と共に、今後も増え続けていくと考えられます。

「相手は四角い箱じゃない。ネットの向こうの何億人」。
 これは、IPAが全国の小中高校生を対象として実施している「情報セキュリティ標語・ポスター」コンクールの、昨年実施した第4回で標語部門の大賞に輝いた東京都の中学生の作品です。目に見えているのは、目の前にあるパソコン(携帯)の画面だけであるが、何億人もの人が、書き込んだ内容を見ることができる状態にある、ということを忘れてはいけない、そんなメッセージがうまく纏められています。
 まだまだマイナーなコンクールではありますが、年を重ねていくうちに、「情報セキュリティとは何か」、「どうすれば事件に巻き込まれずに済むか」、「ネット掲示板に書いていいことと悪いこと」等を少年少女自身が考えてくれる機会を、大人が与えていかなければならない時代にきています。我々、情報セキュリティに関わる人間のみならず、学校の教職員、家庭内でも、事あるごとに、情報モラル教育を施していく必要があるのでないでしょうか。

 そのためには、まずは大人自身が、「情報セキュリティ」についてもう一度考え直す必要があります。又、少年少女にインターネットや携帯電話を利用させる場合には、大人自身がその機能、利用環境、危険性等を充分理解した上で使わせるなどの配慮が欲しいところです。更に言えば、フィルタリング機能やブラウズ履歴検索、メール送受信記録の簡単な解析等に関する知識も、あるに越したことはないかもしれません。

「ネットで繋がる無限の世界 明暗決めるはあなたの手」
 この標語は、2006年に実施したコンクールで標語部門の大賞に輝いた、神奈川県の高校生が考えた作品です。インターネットは世界中と繋がり、無限といってもいい程の情報を入手できるが、その便利なモノを良くするのも悪くするのも自分次第、又、情報を打ち込んだり、マウスをクリックするなど、手を動かすだけで簡単に情報の入手・発信ができるので、自分でやっていることの意味・重要さを充分理解する必要がある、こういったメッセージが含まれている作品です。
 小中高校生のうちから、このような気持ちを持っている生徒なら、将来の日本を託しても安心できそうです。