第699号コラム:上原 哲太郎 会長(立命館大学)
題:「新年のご挨拶」

皆様、新年明けましておめでとうございます。

世界をコロナ禍が襲って2年が経ちますが、多くの方のご努力の甲斐あって、少なくとも我が国では新しい日常の中での社会活動、経済活動が営めるようになってきたと感じます。そんな中、昨年12月には第18回を数えますデジタル・フォレンジック・コミュニティを、ハイブリッド形式にて無事開催することが出来ました。ご参加頂きました皆様、ご講演頂きました講師の皆様、ご協賛頂きました企業の皆様、後援団体の皆様に、厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

さて、2022年は社会にとってさまざまな動きがある年です。国においてはデジタル庁の活動が本格化し、政府系の情報システムでいくつか大きな動きがありそうです。警察庁ではサイバー局とサイバー隊が発足し、ついに国が直接のサイバー捜査能力を持つことは、戦後の警察の組織体制の大きな転換点と言えるでしょう。法律では個人情報保護法において2年分の改正が一気に施行されること、これによりいわゆる「個人情報保護法制2000個問題」の解決が図られることも大きなトピックかと思います。

これらに加えて、今年4月には民法における成年年齢の満18歳への引き下げが行われ、18歳になれば自らの意志で各種契約を行うことができるようになります。一方で、増え続ける詐欺もしくは詐欺まがいの商法において、これまで18歳や19歳は未成年者取消権に基づく保護を受けられていたところ、この保護策が使えなくなるということも懸念されております。加えて特定商取引法と預託法の改正によって、契約書面の紙での交付義務が緩和され電子交付が可能になろうとしているため、今後サイバーの世界で行われる悪徳商法や詐欺が増えることが予想され、またその標的は若い世代にも向けられると懸念されています。このような電子的手段による契約の有効性を巡る争いの解決や、連絡先を偽って逃げようとする悪徳業者の追跡のためにも、デジタル・フォレンジックの活用が今後ますます広がっていくのであろうと思います。

ところで、18歳と言えば本研究会も今年8月23日に設立から満18年を迎え、デジタル・フォレンジックの発展と普及のための社会的な活動団体として認知されると共に、相応の責任を担う団体に発展して参りました。18歳は人間で言えば親元を離れてそろそろ独り暮らしを始める時期でもありますが、本研究会の事務局も、この3月には株式会社フォーカスシステムズ様に間借りをお願いしている状態から卒業して、独立した事務所を構えることになりました。そのために一時的に出費が膨らむことから、会員の皆様に寄付をお願いしているところです。既に多くの方に寄付のお申し出をいただき、大変感謝致しております。誠に有り難うございました。寄付については2月25日まで受け付けておりますので、引き続きよろしくお願い致します。

【募集中】寄付のお願い

さて、このような会員の皆様のご協力とご支援の元、4月には新しい体制での事務局がスタートしますが、今後ますます当研究会がデジタル・フォレンジックの普及に貢献し、社会的に求められる役割を果たしていくためにも、財務体質の強化を図る必要があると感じております。そのために、一層の会員数の増加や、講習会をはじめとする有料イベントの開催、資格試験制度の普及と定着を図り、収入面の安定化を目指して参ります。他方、これらの活動強化によって増大する事務量を4月からの体制においても効率よく捌けるように、デジタル技術・クラウド技術の活用による事務の効率化も進めなくてはならないでしょう。

このような、今後の会運営についての議論は主に理事の皆さんと相談しながら進めて参りますが、その過程では財務全体を見渡して、収支構造のあり方について改めて議論することになるかと思います。その際に特に会員の皆様にとってご関心の高いであろう会費について改定が行われる可能性があります。いずれにせよ次回の5月の総会までには今後の運営の方向性を示しますので、総会の場はもちろんのこと、随時ご意見を会長や理事まで頂戴できればと存じます。本研究会の開かれた運営のためにも、議論への積極的なご参加をお待ちしております。

まだしばらくはコロナ禍の影響は避け得ないかと存じますが、会員の皆様におかれましてはくれぐれもご自愛の上、引き続きデジタル・フォレンジックの発展のための活動にご協力下さい。今年もよろしくお願いいたします。

【著作権は、上原氏に属します】