第756号コラム:手塚 悟 理事(慶應義塾大学 環境情報学部 教授)
題:「慶應義塾大学開催の第12回サイバーセキュリティ国際シンポジウム『社会保障・経済安全保障・国家安全保障における信頼できるサイバーセキュリティアクションの創成』について」

2015年8月に、慶應義塾大学は全塾研究センターとして「サイバーセキュリティ研究センター」を設立しました。その記念行事として2016年2月に開催したサイバーセキュリティ国際シンポジウムを皮切りに、毎年シンポジウムを行ってきました。昨年10月に「慶應義塾大学サイバーセキュリティ研究センター行事『第12回サイバーセキュリティ国際シンポジウム』を開催しましたので、この内容についてご紹介します。

前回、前々回のシンポジウムはコロナ禍での開催であったことから、オンライン会議で開催いたしましたが、今年のシンポジウムは、3年ぶりに慶應義塾大学三田キャンパスにて対面式での開催を実施いたしました。世界のサイバーセキュリティに関する大学連携組織であるInterNational Cyber Security Center of Excellence (INCS-CoE)と、米国の非営利団体であるMITREが共同開催者となり、規模も今まで以上に大きくして実施しました。開催期間は2日間でした。

今回のテーマは、「社会保障・経済安全保障・国家安全保障における信頼できるサイバーセキュリティアクションの創成」でした。サイバーセキュリティは、あらゆる種類のセキュリティに不可欠な要素です。本シンポジウムの目的は、サイバーセキュリティを他の領域に統合するためのアクションを明らかにすることでした。さらに、国、地域のサイバーセキュリティの違いやギャップを検証および対処し、信頼できるマルチステークホルダー・パートナーシップを構築するための実践的なアクションを創成することが極めて重要です。

例えば、社会保障の領域では、日本はマイナンバーカードと健康保険証を統合させるとともに、Society 5.0の実現に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)を実施しています。国際的な社会保障では、各国はIMRT(国際相互承認トラスト)、DFFT(信頼できるデータ自由流通)、日米英デジタル貿易協定、日欧デジタルパートナーシップ、IPEF(インド太平洋経済繁栄枠組み)などを実施しています。これらの取り組みは、すべてサイバーセキュリティがなければ成立しません。

経済安全保障・国家安全保障では、ウクライナに対してハイブリッド型の攻撃が観測され、ウクライナ国外への大きな影響を生んでいます。同様に、台湾に対しても、エスカレートするハイブリッド型の攻撃が見られます。日本は、昨年成立した経済安全保障関連法において、経済を含む国家安全保障を確立し推進しています。世界情勢においては、Five Eyes、AUKUS、Quad、NATOといった多国間連携が、経済を含む国家安全保障の課題に対処しています。

デジタルの世界では、物理的、技術的な境界は存在しません。社会保障、経済安全保障、国家安全保障を含むすべての領域は、デジタル技術に依存しているのが現実です。したがって、経済、食糧供給、金融、エネルギー、通信、輸送などの分野における脆弱性に関して、サイバーセキュリティ技術がすべての領域に関係しています。デジタル・トラストは、すべてのセキュリティ領域において、安心、安全、レジリエントなデジタル環境を構築するための極めて重要な鍵となります。

そこで、今回のシンポジウムでは、政府、産業界、アカデミアが一体となった国際的なマルチステークホルダー・アクションに向けた議論を展開しました。 SDGs(持続可能な開発目標)やGX(グリーントランスフォーメーション)の一環として、カーボンニュートラル、国際資金移動、eIDAS(電子認証・トラストサービス)、5G/6G、AI、IoTイノベーションなどをテーマとしました。

基調講演、パネルディスカッション、専門セッションを行い、INCS-CoEパートナーが共有する国際共同研究、政策、教育項目について、日本、米国、英国、EU、オーストラリア、イスラエル、フランスとの国・地域の、デジタルトラストにおける国際相互連携の実現方法を活発に議論いたしました。

開催日は、2022年10月13日(木)~14日(金)の2日間でした。プログラムの詳細については下記URLをご覧ください。

https://symp.cysec-lab.keio.ac.jp/2022oct/index.html

ウクライナ問題、台湾有事のリスクが高まる中、今回のシンポジウムは世界情勢をタイムリーにとらえた素晴らしいシンポジウムになったと思います。サイバーセキュリティはその中心的な存在として益々必要不可欠なものとなってきています。今回のテーマである「社会保障・経済安全保障・国家安全保障における信頼できるサイバーセキュリティアクションの創成」を改めて考える良い機会となりました。

【著作権は、手塚氏に属します】