第191号コラム「原発事故は「水に流す」な」
第191号コラム:林 紘一郎 理事 (情報セキュリティ大学院大学 学長)
題:「原発事故は「水に流す」な」
3.11の東日本大震災の事故を、大規模な自然災害にとどまらず歴史に残る大惨事にしたのは、東京電力福島第一原子力発電所の放射線事故であった。その原因究明に当たっていた政府の事故調査委員会は、暮れも押し迫った12月26日に中間報告書を公表した。その内容は未だ確定できない部分(たとえば、津波だけが放射線事故の直接的原因なのか、それとも地震そのものも原因の1つなのか)がかなり残されているが、大筋は押えていて、委員会が精力的に調査・分析をしたことが伺える。
この委員会の長を勤めているのは、「失敗学」の提唱者として有名な畑村洋太郎氏(東大名誉教授)である。失敗学は、従来の学問がすべて「成功学」であったことを逆転させる発想で、私が関係している情報セキュリティなどでは、不可欠の発想法である。しかし、残念なことに「情報の公開」を制度的に保障するという伝統を持たない我が国では、分析に必要な事故情報が集まらないことから、失敗学会もできたが期待されたほどの成果を挙げていない。そこで今回のお役目は、同氏にとって「起死回生のチャンス」と思われ、分析に力が入っているのも頷ける。
