第582号コラム:和田 則仁 理事(慶應義塾大学 医学部 一般・消化器外科 講師)
題:「趣味ライフログ」

1年ほど前から、Googleマップのタイムラインで、自分の日々の行動を記録している。スマホの位置情報が逐一Googleに送られ記録されているとはいえ、案外精度がいい加減なため、2、3日に一度Googleマップのタイムラインで、記憶が確かなうちに時間や位置情報を修正する必要がある。これが案外手間のかかる作業で、こんな面倒臭い作業をするモチベーションは何かというと、やはり分単位で自分の居場所を記録に残せるという、自らの生き様を記録に残すライフログ的な誘惑が根底にある。もちろん経費精算や確定申告に利用可能というメリットもあるが、これはやはり趣味の世界といえよう。「ライフログ」というと、もはや死語ともいえる響きがあるけれども、スマホの普及進展とともに無意識のうちにさまざまなプライベートな情報が収集されている状況を鑑みるに、受動的に情報を取られるのと、能動的に情報を提供するのでは、若干意味が違うかなとも感じている。ライフログは、あくまで能動的な活動である。

半年前のコラム「医療の記録のあり方」の中で、リアルでもネットでも行動を隠すのはもはや無理なので、悪いことはできないと思った方がいいというようなことを書いたと思う。最近、Tカードが、ポイント履歴やレンタルビデオのタイトルなどの情報を裁判所の令状なしに捜査当局へ提供していたことがわかり、プラットフォーマーに預けた情報も隠すことのできない情報と位置付けられた事例となった。私が日々Googleマップのタイムラインに提供している正確な位置情報が、もし私の同意なく捜査機関に提供されるとすれば、ちょっと恐ろしいことだとも思う。もし自分が反体制的な思想をもっていたり、特殊な宗教を信奉していたりすれば、ローケーション履歴は絶対に利用しないだろう。そうはいっても、携帯の基地局情報は令状があれば提供されているようなので、おおまかな位置情報は隠すことができないのかなとも思う。

しかしながら、フォレンジック的な観点で言うと、その位置情報を偽装することがもはや容易に可能となっていることは特筆すべきであろう。先述のGoogleマップのタイムラインでは、自分自身でかなり修正が可能となっており、偽装も容易である。捜査機関に提供されるとすれば、修正前の情報なのか、修正後の情報なのかによって、証拠性に大きな違いが出てくる。そもそもスマホのGPSデータを偽装するアプリも登場しており、その信頼性は案外高くないといえよう。

結局、悪いことはできないという結論になるわけで、仮にGPS情報をうまく偽装したとしても、電子マネーの利用履歴や、携帯の基地局情報、街中の監視カメラなど、他の情報との不整合があれば偽装がバレることになるであろう。

趣味として継続しているGoogleマップのタイムラインの精緻化は、いろいろな見方ができるが、とにかく、過去の自分の行動が正確に記録されているという快感のため、時間とエフォートをつぎ込んで、せっせと入力しているのである。

【著作権は、和田氏に属します】