第514号コラム:手塚 悟 理事(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授)
題:「第6回慶應義塾大学サイバーセキュリティ研究センター行事『サイバーセキュリティ国際シンポジウム』について」

2015年8月に、慶應義塾大学は全塾研究センターとして「サイバーセキュリティ研究センター」を設立しました。その記念行事として昨年の2月に開催したサイバーセキュリティ国際シンポジウムについて、第405号コラム「『サイバーセキュリティ国際シンポジウム-重要インフラ対策とTOKYO2020に向けた戦略-』に参加して」にて紹介しました。その後、第432号第458号第490号の本コラムで、第3回、第4回、第5回の「慶應義塾大学サイバーセキュリティ研究センター行事『サイバーセキュリティ国際シンポジウム』」について述べました。

今回のコラムでは、このシリーズ化の第6回目として、3月29日、30日の2日間に渡り、前回と同様の米国の笹川平和財団USAと共同でサイバーセキュリティ研究センターが開催したシンポジウムについてご紹介します。

今回のシンポジウムは、国際的にも検討が進められているサプライチェーンのリスクに関して検討することとし、「信頼できるグローバル・サプライチェーンへ向けた企業意思決定」というテーマを設定しました。また、米国大使館、英国大使館、イスラエル大使館、インドネシア大使館のご支援ご協力により、今までにない国際色豊かなシンポジウムとなりました。具体的には、全部で4トラックが開催され、慶應義塾大学と笹川平和財団USAとの開催では、初めて4トラック、8セッションの規模での開催となり、規模も一気に倍増しました。また、各界の著名人が壇上に上がり、大いに盛り上がりました。シンポジウム開催の前日の3月28日には、笹川平和財団USAが米国流のCISO向けテーブルトップの演習を前回に引き続いて実施し、日本ではなかなか体験できないものとして、前回にも増して参加者に大変好評を博しました。次回以降も実施する予定です。

慶應義塾大学が第3回シンポジウムで設立した、世界初の日米英の主要大学をメンバとしたサイバーセキュリティの国際版CoEであるInterNational Cyber Security Center of Excellence(INCS-CoE)は国際的にも広がりを見せ、今回のシンポジウムでは、イスラエルの大学とインドネシアの大学が新たに参画することになりました。

以下、そのINCS-CoEの内容についてご紹介します。今回のシンポジウムに参加いただいた大学は以下の通りでした。なお、都合により、電話会議の形で参加した大学もありました。

日本の大学:東大、九大、早大、東京電機大、情セ大、慶大
米国の大学:スタンフォード大、CMU、UMBC、ノースイースタン大、デラウェア大、ジョージメイソン大
英国の大学:ケンブリッジ大、インペリアル大、ロイヤル・ハロウェイ大
イスラエルの大学:テルアビブ大、ベングリオン大、テクニオン大
インドネシアの大学:インドネシア国立大

INCS-CoEで検討する分野は以下の通りです。

1.研究
2.シンクタンク
3.教育とトレーニング

具体的には、以前のコラムでご紹介しましたWorking Group(WG)を上記の3つに分け、その中でも、特に以下のようなテーマについて国際連携の下、検討していくことになりました。

1.International Training and Exercise
2.Training Tools
3.Trust and Smart City(Society 5.0)
4.Student CTF/Hack-a-thon
5.International Networking

これらのテーマに対しては、上記の大学で「最強のタイガーチーム」を形成し検討しています。さらに、定期的な電話会議での検討を行っています。

このようにして6回開催して参りましたサイバーセキュリティ国際シンポジウムは、回を重ねるごとに内容が充実し、我が国のサイバーセキュリティ関連のシンポジウムにおいて、大変重要な地位を占めるようになってきたと実感しております。具体的には慶應義塾大学という「学」で開催した国際シンポジウムが、分野を超えて産官学のシンポジウムに発展し、さらに国際的にも広がりが出てきているように思います。今後も、慶應義塾大学では「サイバーセキュリティ国際シンポジウム」をシリーズ化し開催して参りますので、多くの皆様が参加されることを期待しております。

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