第490号コラム:手塚 悟 理事(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授)
題:「第5回慶應義塾大学サイバーセキュリティ研究センター行事『サイバーセキュリティ国際シンポジウム』について」

2015年8月に、慶應義塾大学は全塾研究センターとして「サイバーセキュリティ研究センター」を設立しました。その記念行事として、昨年の2月に開催したサイバーセキュリティ国際シンポジウムを、第405回コラム「『サイバーセキュリティ国際シンポジウム-重要インフラ対策とTOKYO2020に向けた戦略-』に参加して」にて紹介しました。その後、第431回と第458回の本コラムで、第3回と第4回の「慶應義塾大学サイバーセキュリティ研究センター行事『サイバーセキュリティ国際シンポジウム』」について述べました。

今回のコラムでは、このシリーズ化の第5回目として、10月5日、6日の2日間に渡り、前回と同様の米国の笹川平和財団USAと共同でサイバーセキュリティ研究センターが開催したシンポジウムについてご紹介します。また、今回はCyber3カンファレンスが合流して共同開催で実施いたしましたので、それについても述べます。

Cyber3カンファレンスが共同開催となったことで、今までとは違って規模の拡大はもとより質の向上も図られ、大変充実した内容のシンポジウムとなりました。 具体的には、Cyber3カンファレンスが3トラック、笹川平和財団USAが1トラック、慶應義塾大学1トラックでの全部で5トラックが開催されました。特に、Cyber3は「Connect」「Crime」「Security」の3テーマから構成され、それぞれのテーマでは各界の著名人が壇上に上がり、大いに盛り上がりました。笹川平和財団USAは米国流のテーブルトップの演習を行い、日本ではなかなか体験できないものとして、参加者には大変好評でした。次回以降も実施していこうと実施者間で相談しているところです。慶應義塾大学は第3回シンポジウムで設立した日米英の主要大学をメンバとしたサイバーセキュリティの国際版CoEであるInterNational Cyber Security Center of Excellence (INCS-CoE) を中心に議論し、今後の国際連携を検討しました。

以下、そのINCS-CoEの内容について紹介します。今回のシンポジウムに参加いただいた日米英の大学は以下の通りでした。
なお、都合により、電話会議の形で参加した大学もありました。
日本の大学:東大、九大、早大、東京電機大、情セ大、慶大
米国の大学:スタンフォード大、CMU、UMBC、ノースイースタン大、ジョージア工科大、デラウェア大、ジョージメイソン大
英国の大学:ケンブリッジ大、インペリアル大、ロイヤル・ハロウェイ大、クイーンズ・ベルファースト大

INCS-CoEで検討する分野は以下のようなもので進めることにしました。
1 研究
2 シンクタンク
3 教育とトレーニング
具体的には、前回のコラムでご紹介しましたWorking Group(WG)を上記の3つに分け、その中でも、特に以下のようなテーマについて国際連携の下、検討していくことになりました。
1 International Training and Exercise
2 Training Tools
3 Trust and Smart City (Society 5.0)
4 Student CTF/Hack-a-thon
5 International Networking
これらのテーマに対しては、日米英の主要大学で「最強のタイガーチーム」を形成し検討することになりました。

今回の第5回サイバーセキュリティ国際シンポジウムは、慶應義塾大学で始めたアカデミアの国際シンポジウムが、実質的には産官学の国際シンポジウムに発展してきたように思われます。どのように構築していくか検討する上で、日米英の現在の取り組み状況を知れたことは、今後の国際連携の在り方等について考える大変良い機会になったと思っております。今後も、慶應義塾大学では「サイバーセキュリティ国際シンポジウム」をシリーズ化し開催して参りますので、多くの皆様が参加されることを期待しております。

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