第95号コラム: 澤田 忍 幹事 (㈱NTTデータ パブリック&フィナンシャル事業推進部プロジェクトマネジメント推進部セキュリティ技術推進担当)

題:「子どもと情報機器との関わり方」

 

1 桃の節句

昨日は桃の節句で、娘さんのいらっしゃるご家庭ではひな壇を飾るご家族も多かったのではないでしょうか。

昨今では、キャラクターを用いていたり、高級志向を売りにしていたり、様々なひな壇があるそうです。また、都市部においては広い空間を取りづらい住環境に合わせてコンパクトなひな壇の人気があるようです。いずれにせよこういった古くからの行事は、季節の移り変わりを感じ、子どもの成長を見守る良い機会なのだろうと感じます。

 

ところで、私はたまたま教員免許を持っていることもあり、今の子ども達が社会に出る前にどのような教育が必要なのだろうかとふと考えることがあります。

昨今の情報産業の変化は目まぐるしく、何をどこまで教えれば良いか、教育関係者にとっては悩み所でしょう。

 

 

2 子どもを取り巻く情報機器

現在、パーソナルコンピュータだけでなく、携帯電話、PDA、家庭用ゲーム、携帯用音楽機器、組み込み機器やデジタル家電が普及し、いつでもどこでもインターネットに接続して情報機器を利活用していくことが当たり前の社会となっています。

 

子どもにとって情報機器は危険と隣り合わせだからと取り上げることは難しいですし、無意味とも言えます。交通安全と同じで、ここまで情報機器が普及しているのであれば、「利活用の際の情報セキュリティの考え方」「情報の選択の仕方」「道徳・倫理観」を如何に伝えるかの方が重要です。

 

子どもに一番近い情報機器と言えば、携帯電話や家庭用ゲーム、デジタル家電でしょうか。

 

核家族化や共働きが増えた今の日本においては、携帯電話を持つことでいつでも保護者と連絡がとれる利便性、いざとなればGPSで子どもの位置情報を確認し子どもの居場所を把握できる安心感が得られるといった考え方もあります。

家庭用ゲームもデジタル家電もインターネット接続が進み、娯楽の種類も、生活の利便性も向上していくでしょう。

 

ただ、こういった情報機器を子どもたちが「使いこなしてしまう」ことにより新たに発生するトラブルがあるのは事実です。

 

 

3 子どもが利活用する際のコンテンツへの配慮

自己紹介サイト、オンラインゲーム、携帯小説など、子どもにとって魅力的なコンテンツは多く存在し、子ども達の感性に大きな影響を与えています。

気にかかるのは、必ずしも書籍や雑誌のように発刊前の内容確認がなされておらず、情報の責任所在や管理責任が明らかでないということです。これは、今までにあまりなかったことではないでしょうか。何か知りたいときには、検索サイト等により労力や時間・費用をかけることなく欲しい情報を瞬時に得ることができます。その際、掲載されている情報が根拠に基づいた信頼できる内容であるか、情報源を確認し、自分自身でも論理立てて考えさせることが大事だと言えます。

分別のある子どもにとっては、自由度が高く、豊富な情報収集が可能な環境が揃っているといえるでしょう。しかし、全員が自分自身で適切に情報を選択できる訳ではありません。利活用には十分な注意を払い、閲覧するコンテンツの範囲を検討する事も必要です。

 

また、思わぬ不注意で「被害者」「加害者」のいずれにもなり得ます。

掲示板へのいたずらの書き込みを行って世間を騒がせてしまったり、第三者とトラブルを起こしてしまう可能性もあります。自己紹介サイトへの書き込みが原因のひとつと考えられるいじめ・暴行・殺人事件も増えていますから、自分自身や他人の情報は掲載しないよう注意することも必要でしょう。

また、一度電子データとして流出した情報はほとんど永遠に世界中に流通し続けるという影響の重大さ、自身の行動への責任感を認識させなければなりません。

 

子どもが、情報機器を用いたコミュニケーションの楽しさにのめり込みすぎないように、節度を持って利用するよう導く必要があります。

 

 

4 子どもに伝えていくこと

子どもが情報機器を利用するときに周りが気を配ることは、普段の生活で伝えている教育的・道徳的な観点となんら変わりないと思います。例えば、危険な場所(サイト)に行かない、自分と他人の情報(個人情報)は守る、利用する頻度や時間に制限を設ける、掲載内容の正しさを確認し考察するなど、当たり前のことばかりですが、きちんと根本的な方針を伝えていくことです。そして、何を注意すべきか子どもが自ら考える力をつけるよう導いていくことができればさらに良いでしょう。

 

また、少し危惧しているのが、本質的な問題点や構造の理解が不十分であることによるクオリティコントロール感覚の低下です。

構造や仕組みをじっくりと考察して本質的な問題点を見抜く力、アイデアを提起したり因果関係を紐解いて問題を解決していく力、こういった「考える能力」がおろそかにならないよう、じっくり育てていくことが望ましいです。

 

今後社会に出てくる子ども達に環境を整備し、インターネットとの関わり方、情報の守り方、情報の利活用方法など、企業や日本を担っていくために必要十分な情報を伝える社会を作っていきたいですね。

 

【著作権は、澤田氏に属します。】