コラム第936号:「国産経済安全保障支援システムの重要性」

第936号コラム:守本 正宏 理事(株式会社FRONTEO 代表取締役社長)
題:国産経済安全保障支援システムの重要性

生成AIは、企業活動、行政、教育、医療、製造、金融など、社会のあらゆる領域に急速に浸透しつつあります。我が国にとって国産AIの整備は、単なる技術政策の一分野にとどまりません。経済安全保障、産業競争力、データ主権、そして文化・言語の継承に関わる重要な国家的課題です。
同様に、経済安全保障支援システムの国産化も極めて重要です。このシステムを「国産」で構築・運用することは、国家の「戦略的自律性」を維持し、他国からの不当な支配や経済的威圧を防ぐことにつながります。
経済安全保障の分析は、主に「サプライチェーン」「株主支配」「研究者」という3つのネットワークカテゴリに分類されます。分析対象には、オープンソースの情報だけでなく、日本政府や日本企業の機微な独自情報も含まれます。これらが他国製のシステム上で処理されれば、情報が自動的に共有・蓄積されるリスクが生じます。契約上は「顧客情報を閲覧・利用しない」とされていても、有事の際にその約束が完全に守られる保証はありません。
実際、2026年6月12日には、米政府の国家安全保障上の「輸出管理指令」により、Anthropicの超高性能AIモデル『Claude Mythos』の提供が全世界で突然停止されました。この事例が示すように、他国依存のシステムでは、ライセンス供給や運用の継続性が常に脅かされるリスクを孕んでいます。
さらに、最も深刻だと考える問題は、システムを通じた「ディスインフォーメーション(偽情報)攻撃」のリスクです。
経済安全保障の分析システムは、特定の企業や研究者との連携の是非、外国からの投資受け入れにおける実質株主の特定、そしてそれらに伴うリスク判定に大きな影響を与えます。
システム供給国が、日本を貶めるために意図的にリスクのある選択を勧める可能性は低いかもしれません。しかし、日本企業や研究機関が特定のパートナーとコラボレーションすることで日本が大きく発展し、その結果としてシステム供給国にとっての「脅威」となる場合、それを放置するとは考えにくいのが国際政治の現実です。
基本的に同志国以外のシステムを導入することはないとしても、同志国のシステムであれば安全というわけではありません。自国の利益を最優先するのは、国家として当然の振る舞いだからです。
100%の国産化が現実的でなくとも、少なくとも国産システムによる「クロスチェック(検証)機能」は保有すべきです。自国の命運に関わる判断は、自国の情報と分析に基づいて行う体制を、何としても維持していく必要があります。

※著作権は、守本氏に属します。
※本稿は筆者の見解であり、IDFの見解を示すものではありません。