第119号コラム「情報セキュリティの本音と建前」

第119号コラム: 伊藤 一泰 理事(株式会社インターセントラル 常務取締役、IDF理事)
題:「情報セキュリティの本音と建前」

 最近、ある人に薦められて購入した「定時に帰る仕事術」(著者:ローラ・スタック、訳者:古川奈々子、発行所:ヴィレッジブックス)を読んでみた。よくある「○○整理術」のたぐいのハウツウ本だが、無駄な仕事を省いて効率化を図るための方策が要領良くまとめられている。しかしながら、著者がアメリカ人だからなのか、どうもしっくりこない。たとえば、この本には、「携帯電話を使う時間を決めましょう。まわりの人と使用する範囲や時間帯を話し合って決めます。」とあるが、それは理想論であるが現実的ではない。電車の中でいきなり派手な着メロが鳴り、「誰だよ・・・」と見回すと、いい年をしたおじさんが「すみません!電車の中なのですぐ折り返します!」と平身低頭している場面に出くわす。建前では、「電車の中ではマナーモードにしましょう」、「電車内での電話はご遠慮ください」だが、本音は、「いちいちマナーモードにするのも面倒だ」、「社長からの電話だから出ないわけにはいかない」となる。このように、建前と本音を使い分ける日本の社会だから、「定時に帰る」ことは至難の業となる。

第117号コラム「国際競争とデジタル・フォレンジック2(知的財産編)」

第117号コラム: 池上 成朝 幹事((株)UBIC 取締役副社長 フォレンジック事業部 上級分析官)
題:「国際競争とデジタル・フォレンジック2(知的財産編)」

 前回までは、フォレンジック及びディスカバリの発展及び国際競争が日本企業にいかにデジタル・フォレンジック技術の導入を促してきたのかを説明してきました。今回は国際競争の中でも特に知的財産をめぐる国際競争がどのようにデジタル・フォレンジックに関係しているかにフォーカスして考えてみます。

 技術立国である日本の知的財産への意識は大変高く、海を越えた米国での特許登録数でも日本企業は常に年間登録数トップ30社の中に多く入っています。一方特許権を維持する為にはコストが掛り、数多くの特許を維持する為に日本企業は巨額の費用を支払っています。しかし技術トレンドは日々変化し本当に自社にとって必要な特許は何であるのか常に技術・知的財産部員の間で精査が続けられています。その様な中で前回のコラムで記述した国際競争激化により、企業の統合・再編が進みその中でも特許の権利保持者が変化していくことが多くなってきました。企業再編においては企業の価値査定が重要になり知的財産の内容、関連技術の成長性は企業価値査定の中心部分になっています。トレンドに乗った特許を多く持っていれば、それだけ企業価値を高めていくことが出来ますし、社会の注目を集めることもでき企業としては非常に有利な立場になります。企業の中には再編や企業統合より必要な特許を購入し、より早く技術的に優位に立つことを望む場合もあります。特許価格は様々ですが、リサーチや交渉など非常に複雑なプロセスを経て売買が進むわけで売買の成功の可否が企業の成長にも大きな影響を与えます。しかし複雑なプロセスを経て獲得した特許の価値が査定と実際は違うケースも出てきています。実際には特許の権利者が移動していたり、特許権利者が同様の技術で訴訟歴を持っていたりというケースが多く出てきたのです。そこで特許権利を持つ企業や権利保持者を購入前に調査する重要性が増加しています。調査目的としては特許を販売する企業において購入者の認識していない特許権の移動が無いかや技術漏えいが相次ぎ類似品が大量に出回っていないか、また特許権者との利害関係者が類似特許を保有していないかなどの特定が主になります。仮に人的背景調査で問題点が出てきた際などは電子メールの開示を早急に要請しデジタル・フォレンジックを用いた深い調査が必要になってきます。このような調査は早い時点で特許売買の大きなリスクを洗い出すことができ、結果的には売買を中止してしまうような大きな問題を早期に見つけることができ、最終的に企業の特許売買コストを下げる為に役だっています。

第116号コラム「業務でのフォレンジック調査と不正調査」

第116号コラム: 山内 崇 幹事(株式会社ピーシーキッド 取締役 データ復活サービス部 フォレンジックサービス部、IDF「技術」分科会幹事)
題:「業務でのフォレンジック調査と不正調査」

 弊社は業務でフォレンジック調査を行っています。

IDFの会員の中には当然フォレンジック調査を業務としている企業様も多いかと思いますが、他社の調査員の話を聞くとそれぞれの営業先やホームページ、広告また調査の得意とする分野等の違いにより、調査の内容はそれぞれの企業によって傾向があるように見えます。

 その中で弊社が良くお問い合わせ、ご依頼を頂くものは主に業務中のPCの不正利用や残業時間の社員の行動調査、情報の持ち出し等といった、一般的に不正調査と呼ばれる案件が中心です。
皆様も良くご存じの通りフォレンジック調査を行う側としては厳格な証拠保全を行った上でCOC認証によりEvidenceを保護し、FTKやEnCase等のツールを用いながら専門的な訓練を受けた調査員がクライアントの求める証拠を法執行機関等で証拠として通用するように注意をしながら作業を進めていくというように、証拠性に気を使いながら作業を行います。

第115号コラム「アクセス巡回の自動化プログラムと業務妨害罪」

第115号コラム: 石井 徹哉 理事(千葉大学大学院人文社会科学研究科社会科学専攻(法経学部兼務))
題:「アクセス巡回の自動化プログラムと業務妨害罪」

1 はじめに
librahack事件をご存じでしょうか。ある方が、岡崎市立中央図書館(通称Libra)の新着図書のページが使いづらいことから、自分専用のサイトを作ろうとして、phpスクリプトを使用して、新着図書ページから情報を取得しようとしたことに始まります。詳細は、御本人が作成されたをご覧下さい。
最初は、マニュアルでテストし、その後自動的にスクリプトを動かすようにしたのですが、シリアルアクセスでおよそ毎秒1リクエストになるように設定していたそうです。しかし、実際には、図書館側のサーバが落ちる自体となり、スクリプトを作成し、動かしていた人が逮捕され、20日の勾留の後、不起訴(起訴猶予)処分とされたものです。
問題は、法的な問題、技術的な問題、あるいは、社会制度上の問題等が交錯しており、議論することが難しいのですが、刑法の側から見たちょっとした分析と本件が示した課題について若干の感想を述べてみたいと思います。