第109号コラム「お手軽なオープン・ソース・インテリジェンスの手法」

第109号コラム: 名和 利男 理事(株式会社サイバーディフェンス研究所 上級分析官、IDF理事)
題:「お手軽なオープン・ソース・インテリジェンスの手法」

読者のみなさんの中には、日々の業務において、様々な情報を収集及びまとめをしなければならない、或いは、特定の事象について詳細に調査しなければならない立場の方々がおられるかと思います。

ただ、「情報の収集及び調査」は、意外に大変な作業であり、相当の根気と忍耐が必要となることが多いと思います。どうしても見つからない場合は、その筋の専門家を活用するという手段があると思いますが、本当に望む情報は、自ら手を動かさないと得られないものです。

特に、サイバーセキュリティは、専門性が高いものでありながら、どこでも発生する可能性のある厄介のものです。また、サイバーセキュリティインシデントの発生頻度の上昇により、予防的措置及び事後的措置等の目的のため、サイバーセキュリティに関する情報収集をしなければならない方々に出会うことが多くなりました。
そこで、今回のコラムについては、オープン・ソース・インテリジェンスという考え方に基づいて、みなさんにお役に立ちそうな「お手軽な手法」を紹介させていただきます。

第108号コラム「韓国は如何にして電子行政世界最先進国家となりし乎――韓国訪問記」

第108号コラム:辻井 重男 会長(中央大学 研究開発機構 教授、IDF会長)
題:「韓国は如何にして電子行政世界最先進国家となりし乎――韓国訪問記」

Ⅰ 韓国情勢
 国連のサイト「UNE-Government Development Knowledge Database」では、各国の電子政府の準備度を調査し、ランキングを発表している。それによれば、1位は韓国、2位米国、3位カナダ、以下、ヨーロッパ諸国が続き、我が日本は17位である。
 様々な項目ごとに、準備度を設けて、点数をつけているが、そのような採点法で良いのか、私には疑問に思われる。電子行政は、全体最適化の構想を定めた上で進めることが必須である。各省庁や自治体などの組織毎の最適化を積み重ねても、理想的な姿には近づけない。多くの国は、電子行政の到達点へ向けてのプロセスにあるが、全体最適化のプロセスにあるのか、個別最適化を積み重ねるプロセスにあるのか、同じ点数でも、意味が違ってくるのではないだろうか。
さて、その全体最適化を進めた、世界最先進国、韓国を本年(2010年)4月21日から24日の4日間、電子行政のヨン様こと、廉 宗淳氏の案内で、一行5名が訪問した。
 自民党政権の頃は、野田聖子元IT担当大臣、最近では、廉氏の案内で、原口総務大臣も韓国を訪れている。我々は、日本で言えば、東京都港区役所に相当するソウル市の江南区役所も訪れたが、米国を含め60カ国からの訪問を受けたとのことである。
 日本の国会図書館に当たる中央図書館の敷地には、4階建てのデジタル図書館が建てられ、1億冊が収容されているそうである。著作権の問題があるから、館外への貸し出しはしていないが、館内では、拡大、手めくりなどが自由に出来る大画面で、多数の人が読書を楽しんでいた。
何故、韓国が電子行政で世界トップに躍進したのか、私の俄か韓国出羽守の目で観たところ、次のような理由・動機によるものと思われる。

第107号コラム「『医療』分科会第7期の活動にあたり」

第107号コラム:中安 一幸 幹事(厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室主査/東北大学大学院医学系研究科客員准教授、IDF「医療」分科会主査)
題:「『医療』分科会第7期の活動にあたり」

 第7期より「医療」分科会主査を拝命したことを機に、「医療」分科会の今後の活動方針について所感を述べておきたい。
 第7期を迎えて「技術」分科会、「法務・監査」分科会におかれては、活動の成果をガイドラインとして公表されたり、書籍として纏められる等、わかりやすい成果が結実しているところであるが、「医療」分科会にあってはまだそこまで達してはいない。
 もっとも若い分科会であることももちろんその理由ではあるが、今後の「医療」分科会の活動と成果を構想する際には、分科会の性格というものも思慮に含めなければならない。
 医療を業として行っていく上では、診療そのものや保険請求、医療を業とする法人の運営など、種々の法令の支配を受け、各方面からの監査・審査等も受けねばならない。営利を目的としないまでも医療を業とする経営体と見做すならば、企業法務、訴訟対策等の観点から「法務・監査」分科会にて進められている活動の目的と、どこが違うのかということになる。
 ターミノロジー(これは専門用語であるから当然としても)、メッセージ構造等の標準が策定されており、そこから参照されるコード体系等にも「医療分野」に特有の決まりごとというものこそあれ、伝達、蓄積、共用するということには既存の情報技術を使うのであるから、フォレンジック技術についても「医療」分科会で開発を試みるという性格のものでもないならば「技術」分科会があれば事足るということになる。
 大きく言えば、デジタル・フォレンジックを論ずる上では「法務・監査」分科会は「動機、必然性」、「技術」分科会は「手段、方策」をテーマとしていると考えることができるが、そうすると「医療」分科会設立の必然性は、医療情報の特性と現下の法制等との関係性を十分に吟味した上で、フォレンジック技術の適用可能性を探ることになると考えられる。

第106号コラム「企業の保有情報はどんな場面で証拠になるのか」

第106号コラム:小向 太郎 理事(株式会社情報通信総合研究所 法制度研究グループ部長 主席研究員)
題:「企業の保有情報はどんな場面で証拠になるのか」

 デジタル・フォレンジックとは、電磁的記録を法的な係争の場面で扱うための手法や技術のことと定義されています(特定非営利活動法人デジタル・フォレンジック研究会:https://digitalforensic.jp/)。企業が持っている情報が証拠として扱われる場面として、すぐに思いつくのは次のようなものでしょうか。

(1)企業の犯罪が疑われて、捜査機関による捜査が入る

(2)企業が行った行為が不法行為であるとして民事訴訟が提起される

(3)企業内の不正が疑われるので、従業者に関する情報を収集・保全し、訴訟等に備える

(4)第三者が行った違法行為に関して協力を求められる

 まず、「(1)企業の犯罪が疑われて、捜査機関による捜査が入る」や「(2)企業が行った行為が不法行為であるとして民事訴訟が提起される」については、イメージしやすいと思います。場合によりけりではありますが、一大事ですよね。刑事事件の強制捜査(刑事訴訟法218条等)や民事訴訟の裁判所の文書提出命令(民事訴訟法223条)のように、法的な強制力を伴う証拠開示請求には従わなくてはなりません。その他の要請については、当事者として自分が出す証拠を慎重に選んでいくことになると思います。

第105号コラム「デジタルデータの改ざん防止とその保証」

第105号コラム:佐藤 慶浩 理事(日本ヒューレットパッカード株式会社 個人情報保護対策室 室長)
題:「デジタルデータの改ざん防止とその保証」

 先日、当研究会の医療分科会のパネルディスカッションに参加した。お医者さんに囲まれて、パネリストとしてはIT畑からは僕ひとりの参加だった。

 いきなり余談だが、この分科会の主査は小説からTVドラマ化された「チームバチスタの栄光」の白鳥技官を彷彿とする。当研究会における劇中のグッチーこと田口くんは誰なんだろうと、つい考えてしまう。

 そんなテンションのディスカッションの一部として、「医療行為のログをいくら記録しても、デジタルデータは改ざんしやすいとみなされていると、デジタルデータとして正確に記録することの便益が高まり難い。」という課題認識が紹介された。

 医療における医者の行為は、性善説で考えなければ始まらないというのは、秋山理事の講演を聞いたことがある方なら、よく理解できるであろう。しかし、現実社会では、医療行為の結果がよくないと、行為に問題があったのではないか?さらには、その問題行為を隠ぺいしようとしているのではないか?という疑念を持たれることがある。そこで、医療行為をすべて記録に残せば、行為に問題がないことを立証できそうだが、疑心暗鬼となった者は、記録のうち都合の悪いデータを改変して、行為に問題がなかったことを偽証するのではないかと疑う。というのが、この背景である。
 そのときに、デジタルデータとしての記録では改ざんしやすいと思われれば、紙面などの記録の方が確実となり、医療機関がデジタル記録を導入する便益が高くならないというわけである。
 フォレンジックで確認する行為の類型については、デジタル・フォレンジック事典の第6章に書いたとおりだが、不正行為があったことの確認と、不正行為がなかったことの確認は真逆のものである。フォレンジックという語感から、前者に偏りがちだが、記録する動機付けには後者の方が重要となる。先述の課題認識は、まさに後者のことだ。