第113号コラム「医療分野におけるデジタル・フォレンジックへの期待-アメリカの一事例から-」

第113号コラム: 佐藤 智晶 幹事(東京大学政策ビジョン研究センター 特任助教)
題:「医療分野におけるデジタル・フォレンジックへの期待-アメリカの一事例から-」

 本コラムでは、医療分野におけるデジタル・フォレンジックの適用可能性に関連して、アメリカの事例を紹介する。そして最後に、デジタル・フォレンジックへの期待を述べる。

 医療分野におけるデジタル・フォレンジックといっても、場面はさまざまであろう(中安一幸幹事「第107号コラム「医療」分科会第7期の活動にあたり」を参照)。診療はもちろん医学研究でも、インシデントレスポンスや訴訟が問題となる可能性を否定できない。本稿では、そのなかでも処方せんに関連する問題を取り上げる。
 アメリカでは、処方せんを利用した薬剤給付管理が進んでいる。薬剤給付管理とは、誤解を避けずにごく簡単に言えば、個人識別情報を除去した後の処方せんをデータ・マイニングして、その情報に基づいて医師に最善の薬剤処方を促すための重要な業務である。医師と患者はもちろんのこと、製薬会社にとっても薬剤給付管理は欠かせない。製薬会社は、データ・マイニングの結果に基づいて、医師に効果的な販売促進活動ができるからである。

第112号コラム「犯罪の最前線からデジタル・フォレンジック?」

第112号コラム:大橋 充直 氏(ハッカー検事 IDF会員)
題:「犯罪の最前線からデジタル・フォレンジック?」

1 急速な電子化とネット化だが
 検察庁へ任官時に私物パソコンを持ち込んでから、犯罪の最前線にいること延べ20年を突破した。2年間の法総研研究官のときも、サイバー条約関連立法動向を見据えたし、法務統計や司法統計を通して、ハイテク犯罪(サイバー犯罪)を巨視的に見つめた。その間に私物パソコンも、CUIシングルタスクDOSマシンからGUIネット対応マルチタスクOSマシンへと更新を重ねた。コンピュータの普及、インターネットの普及、携帯電話の普及などに比例して、ハイテク犯罪が普及?したし、普及のほかに手口も高度化し、それに併せて取締り技法も、証拠化技法も進化した。
 もとより、社会の電子化とネット化はとどまるところを知らず、ごく普通の町医者も電子カルテを叩きながら問診するのが普通になったし、犯罪の被害者や目撃者も、携帯写メで逃走車両のナンバーを撮影したり、脅迫メールの通信履歴を保存したまま、携帯ごと画像やメール1送受信記録を提出して捜査に協力する時代である。

第111号コラム「外国判例事情 -ブラックベリーのデータについても保存義務-」

第111号コラム:金子 宏直 氏(東京工業大学大学院 社会理工学研究科 准教授)
題:「外国判例事情 -ブラックベリーのデータについても保存義務-」

 先日の法務・監査分科会で取り上げた米国のe-Discovery事例の中から1件簡単に紹介する。米国では、訴訟が予測される時点で、企業は速やかにメールサーバーや問題の鍵となる人物の使用しているPC等のデータが消去、改変されないように保存する義務が判例法上認められるようになっている。数年前であれば、都合の悪いデータを故意に消去して、訴訟の相手方当事者からのディスカバリの要求に対応しないという者も存在していたが、近時は、そのような故意による消去は裁判所による金銭負担その他の制裁の対象となるため、制裁を覚悟の上でなければ行われない。そして、訴訟が予測される時点でも、通常業務の関係で意図せずに古いメールやファイルを順次消去することがあるため、企業は社内全体に対して適切なデータ保存を即時に行うように周知し、かつ、システム管理者等の専門家による適切な保存手順を踏むことが求められている。

第110号コラム「フォレンジック業界の再編?」

第110号コラム: 芝 啓真 氏(株式会社フォーカスシステムズ フォレンジックセキュリティ室)
題:「フォレンジック業界の再編?」

 仰々しいタイトルをつけてしまい少し後悔していますが、フォレンジック製品のメーカーの買収についての話題です。一体フォレンジック業界の再編とは何事かと思われた方、申し訳ございません。

 「Guidance Software」「Tableau」この二つの言葉を聞いてピンと来た人ももしかするといらっしゃるかもしれません。約一カ月前の2010年5月に、Guidance Software社がTableau社を買収したというニュースが報じられました。私にとっては最近一カ月で一番驚いたニュースでした。

 とはいえ、日本ではまだニッチなフォレンジック業界の話題のため、念のためそれぞれどのような会社なのか簡単にご説明させて頂きます。ご存知の方は飛ばしてお読み下さい。
 Guidance Software社は「EnCase」という調査解析ソフトウェアのメーカーです。EnCaseは、フォレンジック調査において世界中で使用されているソフトウェアの一つと言っても過言ではないと思います。一方Tableau社は、HDDやUSB、Firewire、各種メディアカードなどの書込み防止装置や、HDDデュプリケーターなどのメーカーであり、10万個以上の書込み防止装置の販売実績がある会社です。

第109号コラム「お手軽なオープン・ソース・インテリジェンスの手法」

第109号コラム: 名和 利男 理事(株式会社サイバーディフェンス研究所 上級分析官、IDF理事)
題:「お手軽なオープン・ソース・インテリジェンスの手法」

読者のみなさんの中には、日々の業務において、様々な情報を収集及びまとめをしなければならない、或いは、特定の事象について詳細に調査しなければならない立場の方々がおられるかと思います。

ただ、「情報の収集及び調査」は、意外に大変な作業であり、相当の根気と忍耐が必要となることが多いと思います。どうしても見つからない場合は、その筋の専門家を活用するという手段があると思いますが、本当に望む情報は、自ら手を動かさないと得られないものです。

特に、サイバーセキュリティは、専門性が高いものでありながら、どこでも発生する可能性のある厄介のものです。また、サイバーセキュリティインシデントの発生頻度の上昇により、予防的措置及び事後的措置等の目的のため、サイバーセキュリティに関する情報収集をしなければならない方々に出会うことが多くなりました。
そこで、今回のコラムについては、オープン・ソース・インテリジェンスという考え方に基づいて、みなさんにお役に立ちそうな「お手軽な手法」を紹介させていただきます。