第261号コラム「セキュリティの基本はずっとかわっていない」

第262号コラム:辻井 重男 顧問(中央大学研究開発機構 教授)
題:「デジタル・フォレンジックと日本の将来―言語と論理の視点から―その1」

1.この題名は、言語解析的に見て如何?

この題名では、(デジタル・フォレンジック)と(日本の将来)の関係について考察すると言う意味に受け取られるかも知れませんが、私の意図は、「デジタル・フォレンジックの将来」についても「日本の将来」についても、言語と論理の視点から考えてみたいという点にあります。つまり、「(デジタル・フォレンジックと日本)の将来」です。

同じ構文でも、「晶子と鉄幹の将来」という題名なら、「(晶子と鉄幹)の将来」という意味に受け取る人が、「晶子と(鉄幹の将来)」より多いかもしれません。日本語の構文解析は、意味解析レベルまで上げないと難しいということの一例でしょう。「日本語の」と断りましたが、英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語など欧州語同士の翻訳には、通常、翻訳者のオリジナリティは認められないようです。単語レベルの形態素解析と文法レベルの構文解析で、機械的にやれるということでしょう。

このコラムでは、デジタル・フォレンジックにおける言語解析と論理学の導入、及び、日本文化における論理性について、2回に分けて考えてみたいと思います。

第260号コラム「インシデント・レスポンスのための人材育成~白浜シンポジウム併設危機管理コンテストとは~」

第260号コラム:上原 哲太郎 理事
(立命館大学 情報理工学部 情報システム学科 教授)
題:「インシデント・レスポンスのための人材育成
~白浜シンポジウム併設危機管理コンテストとは~」

いきなり私事で恐縮ではありますが、私こと上原は3月末をもって総務省 情報通信国際戦略局 通信規格課 標準化推進官の職を辞し、この4月から立命館大学に採用して頂きました。こちらでは、情報理工学部情報システム学科にサイバーセキュリティ研究室という新しい研究室を立ち上げています。研究テーマには、デジタル・フォレンジックを明記しました。7月頃には学生が配属され、いよいよ活動開始する予定です。関係の皆様にもご指導ご鞭撻を賜りたく、今後ともよろしくお願いいたします。

さて、このメールマガジンでも私が担当になるたびに例年ご案内申し上げております通り、「サイバー犯罪に関する白浜シンポジウム」が今年も5月23~25日の日程で開催されます。今年は特に、例の遠隔操作ウィルス事件を意識したテーマが設定されていますので、それを中心とした話題が出るかと思います。あの事件では警察の能力、とりわけ人材の確保が課題であることが浮き彫りになりました。情報セキュリティ関係の人材育成というのは業界的にも長く問題にされてきた大きな課題の一つで、さまざまな取り組みが各所でなされていますが、デジタル・フォレンジック関係の人材育成の取り組みはそれほど多くはないのではないでしょうか。そんな中、昨年あたりは比較的関係が深い取り組みとして、CTFやそれに似た形式のコンテストが話題になりました。特に、経済産業省がCTF形式のセキュリティコンテスト「CTFチャレンジジャパン」を後推ししたことは一般マスコミにも取り上げられ、大きな話題になりました。その他、類似の取り組みとしてSECCON CTFやWASForum Hardening Projectなどのようなものがあると思います。

第259号コラム「第10期「医療」分科会活動方針」

第259号コラム:中安 一幸 主査
(厚生労働省 政策統括官付情報政策担当参事官室 室長補佐、
北海道大学大学院 保険科学研究院 客員准教授)
題:「第10期「医療」分科会活動方針」

1.医療分野のICT化の方向性

「医療」分科会においては、主として医療情報の二次利用の公益性について理解を獲得すること、現下法制においては二次利用と位置づけられる公益のための利活用に対し、プライヴァシー保護との両立をもって安心感と有用性を訴求することを中心に活動してきた。

無論、利活用しない又はしてはならないデータは作成・管理しておく必要もなく(むしろすべきでなく)、医療分野においてはしばしばそれは、非常に機微性が高く取扱いを誤れば重篤なプライヴァシー侵害(種々の差別や個人の尊厳を傷つけるような)を招来しかねないものであるため、利活用に十分な価値があること、安全管理に負担を生じてでも活用可能な情報化を目指す必要があることを説くことには重要な意味がある。

しかし一方で我が国の医療というものは、公定価格市場における強い公共性を帯びるサービスでありながらその大半を民間サービス事業者に供給を委ねている事実がある。医療のICT化は政策の一つに位置づけられているとは言え、医療機関は自らの負担で情報化を進め、公益と考えられる地域連携や医学研究、医療政策や医療経済を考える上でのevidenceとして、患者にまつわるデータを拠出することを要請される。

データを活用したい者からみれば公共の利益のための要請であるとして、それが当然であるかのようにそう述べるが、医療機関からすれば、患者に治療を施したり療養せしめたりということが本来の業であって、データを作成・管理することは、その業のため必要に迫られてそうしているに過ぎない。患者の立場からしても、自身が治療してもらうために必要だからこそ個人情報を取得せしめているのであって、二次利用云々が自身の利益にならないならこれに同意するいわれはない、ということになる。

第258号コラム「『法務・監査』分科会の第10期活動方針について」

第258号コラム:伊藤 一泰 理事(株式会社インターセントラル 取締役副社長)
題:「『法務・監査』分科会の第10期活動方針について」

昨年から「法務・監査」分科会の主査を務めさせていただいておりますが、第9期活動報告を取りまとめるに当たり、いくつかの反省点がありました。

第一に、主査の交代があったため(言い訳です)期初のスタートが出遅れてしまい、第1回の分科会開催が7月となってしまった点です。

第二に、第4回分科会が講師の選定やスケジュール調整に手間取り、予定していた開催時期から大幅にずれ込んだため、結果的に、計画していた年5回の開催が出来ず、年4回に止まってしまった点です。

第10期の活動方針を策定する際には、これらの反省を踏まえ、常に前倒しの手配を心掛けていきたいと思っております。とはいうものの、既に1ヶ月が経過してしまい、本原稿も締切ギリギリとなり、事務局にご迷惑をお掛けしている状況は冷汗三斗の思いです。

私の一番の関心事は、組織内の法令違反をどのように防ぐのか、そしてデジタル・フォレンジック技術が具体的にどう活用できるかということです。
対象者には社長等のトップマネジメントも含まれるため、普通であれば、中核的な役割を担う企業の管理部門も、この問題については積極的に動けない状況にあろうかと思っております。光学機器メーカーO社や大手製紙メーカーD社など大きく報道された事案が記憶に新しいのは言うまでもありません。

第257号コラム「ネットワーク・フォレンジックの限界と事前の設定確認の重要性」

第257号コラム:名和 利男 理事
(株式会社サイバーディフェンス研究所 情報分析部 部長 上級分析官)
題:「ネットワーク・フォレンジックの限界と事前の設定確認の重要性

ここ数ヶ月、外部からのサイバー攻撃によるインシデントが急増している。筆者のチームで、依頼に基づいた緊急的な対処支援を行なっているところがあるが、そのリソースを確保することが徐々に難しくなりつつあり、止むを得ずに頂いた依頼をお断りせざるを得ない状況が発生している。

その対処の実態を示すものとして、以前、本コラムでネットワーク・フォレンジックに関することを紹介させていただいた。

212号コラム「ネットワーク・フォレンジックの経験から得られたこと」

https://digitalforensic.jp/2014/06/26/column212/

そのコラムを書いてから1年も経っていないが、外部からのサイバー攻撃の手口は、より一層多様化・巧妙化しており、その複雑さは想像以上なものとなっている。現場対処の中で感じるところであるが、ネットワーク・フォレンジックの技法が十分に確立していない状況であるのに、もはや限界が見えつつあると言わざるを得ない。

この理由は、次のような実例で説明できる。なお、この実例は、筆者のチームによる対処支援の経験の中で比較的多いパターンであるが、感染した端末やネットワークシステムの状況により、その順序や利用するマルウェア等は大きく異なる。