第19号コラム「ユビキタス・ネットワーク社会におけるデジタル・フォレンジックへの期待」

第19号コラム:安冨 潔 副会長(慶應義塾大学大学院法務研究科 学部教授、弁護士)
題:「ユビキタス・ネットワーク社会におけるデジタル・フォレンジックへの期待」

わが国は,明治維新を契機として,農業社会から工業社会へと移行し,第2次世界大戦の終戦を機に,さらに大量生産型の工業社会を急速に発展させ,米国に次ぐ経済大国に成長した。こうした状況にあって,1960年代に始まったコンピュータや通信技術の急速な発展とともに世界規模で進行するIT(情報技術)革命は,18世紀に英国で始まった産業革命に匹敵する歴史的大転換を社会にもたらした。産業革命では,蒸気機関の発明を発端とする動力技術の進歩が世界を農業社会から工業社会に移行させ,個人,企業,国家の社会経済活動のあり方を一変させたが,インターネットを中心とする情報技術の進歩は,情報流通の費用と時間を劇的に低下させ,髙密度の情報の流通を容易にすることにより,人と人との関係,人と組織との関係,人と社会との関係を1変させることとなった。そして,今後,世界は知識の相互連鎖的な進化により高度な付加価値が生み出される知識創発型社会に急速に移行していくと考えられる。そうしたなかでわが国が引き続き経済的に繁栄し,国民全体の更に豊かな生活を実現するためには,情報と知識が付加価値の源泉となる新しい社会にふさわしい法制度や情報通信インフラなどの国家基盤を早急に確立する必要がある。

第17号コラム「デジタル・フォレンジックと知的財産権」

第17号コラム:須川 賢洋 理事(新潟大学 法学部 助教)
題:「デジタル・フォレンジックと知的財産権」

デジタル・フォレンジックという言葉は非常に広範囲に使われており、使う際にはきちんと範囲を限定すべきだということは既に何度もこのコラムで書かれています。この事は裏を返せば、日本ではまだまだデジタル・フォレンジック分野における未開拓領域が多くあることを物語っています。

今回はそんな領域の一つとして知的財産との関係を少し述べてみたいと思います。よって今回は、単なる犯罪捜査などに留まらない”広義”のデジタル・フォレンジックの話となります。

「デジタル・フォレンジック事典」出版の際には時間的な制約等から、営業秘密(トレードシークレット)の解説以外には、残念ながらデジタル・フォレンジックと知的財産権との関係については殆ど触れることができませんでした。しかしながら、知財とデジタル・フォレンジックは決して無関係ではありません。このことは、過去のデジタル・フォレンジック・コミュニティや分科会、事典説明会の折りには少しずつですが述べているので、ご記憶にある方もいるかと思います。今回は、その辺りをもう少しだけ詳しく解説してみたいと思います。