第25号コラム「日本企業とマネジメントシステム」

第25号コラム:熊平 美香 監事(財団法人クマヒラセキュリティ財団 専務理事)
題:「日本企業とマネジメントシステム」

デジタル・フォレンジックにおける企業の説明責任、J-SOX法への対応、ISMSにおける認証と、IT化の時代になり、企業には新たな取り組みが求められるようになった。これらの要求は、その目的および手続きには違いがあるものの、企業にマネジメントシステムの構築を求める。日本企業におけるマネジメントシステムの確立について、期待を述べてみたい。

<マネジメントシステムの前提となる役割・権限・責任の明確化>
日本におけるバブル全盛期の1989年、米国を訪れた際に、2つの日本では考えられない顧客対応に憤慨した経験がある。一つは、円をドルに換金する目的のために、銀行を訪れた時のことだ。順番を待ち、テラー窓口に行き、500ドル相当の円を渡して換金を求めると、100ドル以上は自分の権限では対応できないと言われ、別な窓口を紹介された。それから、3つの窓口をたらいまわしにされた末に、やっと500ドルを受け取ることができた。もう一つは、購入した家具をメーカーに取りに行った時のことである。窓口は、17時まで。私が到着したのは、17時1分。目の前には、片付けをしている受付担当者がいるのに、「窓口はもうすでに終了した。」と言われ、私は、翌日出直すことになった。マネジメントシステムの話になると、いつも、この2つの出来事を思い出す。日本では考えられないような顧客接点ではあるが、二人のアメリカ人は、役割期待に忠実に答えていただけである。確かに、顧客視点に立ったおもてなしやサービスという観点からは評価できないが、これが、マネジメントシステムの前提としての役割期待および権限の明確化なのである。

第24号コラム「マネジメントにおけるセキュリティを考える ~信頼の糧としての全数記録~」

第24号コラム:秋山 昌範 理事(マサチューセッツ工科大学 スローン経営大学院 客員教授)
題:「マネジメントにおけるセキュリティを考える ~信頼の糧としての全数記録~」

※ 本稿は、10/10(金)「ネットワーク・セキュリティ・ワークショップin越後湯沢」にて秋山理事が講演

された際の配布レジュメです。

1 信頼に必要なフォレンジック
医療における医師患者間の信頼関係においては、まず品質の良い医療をすることが大前提であり、質の高い医療をしているからこそ、フォレンジックが必要である。クオリティがあるところにフォレンジックがないとかみ合わないし、フォレンジックは品質を保証するための道具である。言動に責任をもつことで、「信頼」が得られる。医療において一番重要なことはTrust(信頼)である。Trust が必要になった背景は、嘘がばれるような世の中になったからことである。インターネットやグーグルとウェブ2.0、具体的にはブログや2ちゃんねるにより、裏側まで明らかになってきた。草の根情報が流通するようになったのである。その結果、医療に対する信頼感が揺らいできている。
そこで、デジタル・フォレンジックが必要になる。例えば専門家がなりすまして、2ちゃんねるに書き込んでは、歪んだかたちで世論を誘導することになる。フォレンジックを必要とするためには、まず守るべきものが必須である。守るべきものは、プライバシーである。

第22号コラム「IDのない『人』も『もの』も存在しない?」

第22号コラム:林 紘一郎 理事(情報セキュリティ大学院大学 副学長)
題:「IDのない『人』も『もの』も存在しない?」

NTTの後輩である曽根原登さん(現国立情報学研究所教授)のご配慮があって、画像電子学会という畑違いの学会に呼んでいただいたのは、2003年3月のことであった。

テーマは安田浩さん(当時は東京大学、現東京電機大学教授)が提唱し、私も参画していたcDIf(コンテンツIDフォーラム)の目指す「情報の円滑な流通をサポートするシステム」であった。そして何より沖縄という開催場所が、私には魅力的であった。台湾生まれの私も、それまで1度も行ったことがなかったからである。

会議は安田さんの「全員コンテンツ時代」が先にあり、次いで私が、コンテンツIDを著作権制度の中に位置づけると、無方式主義(審査や登録などの一切の手続きなしに権利が発生する)を微修正して、任意の方式主義を導入することに近づく旨の提起を行なった。この発表資料は私の名前で検索していただくと、なぜか意外に上位にランクされている。(「柔らかな著作権制度を目指して」http://www.rieti.go.jp/jp/events/03042101/pdf/hayashi.pdf)

第21号コラム「ニーズとシーズ、目的と手段」

第21号コラム:丸山 満彦 監事(監査法人トーマツ パートナー、公認会計士)
題:「ニーズとシーズ、目的と手段」

ニーズとシーズ
いろいろな定義の仕方があると思いますが、需要者が望んでいるものを「ニーズ」、提供者が有しているものを「シーズ」ということにしましょう。ニーズとシーズが一致すれば交換が成立することになります。例えば、「楽して洗濯をしたい」というニーズに対して、「電気で洗濯ができる機械をつくれる」というシーズがあればそこで「電気洗濯機」というものを通じてニーズとシーズが一致し、交換が成立します。シーズを中心に考えるのをプロダクトアウトの発想という場合もあります。「電気洗濯機を作れる。世の中には、楽して洗濯したいニーズがきっとあるはずだ。だからきっとこれは売れる」。一方、ニーズを中心に考えるのがマーケットインの発想といえるでしょう。「楽して洗濯したい」というニーズを把握してから、「それなら電気洗濯機というものを売ろう。そのためには電気洗濯機を作らないといけない。」という考え方です。需要者側のニーズが大きい場合にはプロダクトアウト型つまり、シーズ中心のビジネスが成り立ちやすくなります。一方、需要者側のニーズに比べると供給者側のシーズが多い場合には、マーケットイン型つまり、ニーズ中心のビジネスが成り立ちやすくなります。例えば、マーケットが非常にセグメント化されている場合などは、そのニーズにマッチしなければ、非常にすばらしいシーズがあったとしてもビジネスとしては成り立ちにくいことになります。最近では、マーケットイン型のビジネスが持ち上げられている嫌いはありますが、マーケットイン型のビジネスが良くてプロダクトアウト型のビジネスが悪いと言うわけではありません。非常に有益なシーズがある場合は、むしろプロダクトアウト型でマーケットを作っていくということも可能です。重要なことは、需要と供給のバランス、ニーズとシーズの強さのバランスや社会的な必要性のバランスを見極めながらビジネスを展開していくことです。