第29号コラム「未来を創り出すデジタル・フォレンジック」

第29号コラム:澤田 忍 幹事(株式会社NTTデータ 公共ビジネス推進部 技術戦略部 セキュリティ技術推進担当)
題:「未来を創り出すデジタル・フォレンジック」

■情報化により創り出される未来

私は1970年代に生まれ、成長期に電子化・情報化による飛躍的な社会変化を体感した世代だ。パーソナルコンピュータは多くの家庭に普及し、大多数の人が携帯電話を保有する時代となったが、10年前、20年前にこの現実を想像していただろうか。普段の生活において手放せない携帯電話は、今や通話やメールのみならず、カメラ、交通チケットの予約、定期、金融取引、GPS機能など、本当に様々なことを実現するツールになっている。これだけ大きな変化を遂げるならば、次の10年、社会はどのように変化するのだろうかと夢が膨らむ。たとえば、

・携帯電話のさらなる多機能化と、その普及・定着

・サベイランスシステムの監視による安全な社会の実現

・センサータグにより人の見守りやトレーサビリティを実施

・ロボットによる重労働作業や単純作業のサポート

このように、近未来の夢と思われていることが、当たり前のように普及していてもおかしくない。

社会の発展に伴い、「情報セキュリティ技術」「プライバシーの保護」「法制度確立」の必要性がさらに高まることは想像に難くない。デジタル・フォレンジックの意義はますます大きくなるだろう。

第28号コラム「メディカル・フォレンジック・システムの紹介」

第28号コラム:吉崎 徳彦 幹事(KSオリンパス株式会社 医療機器本部 開発推進室 開発推進グループ グループリーダー 課長)
題:「メディカル・フォレンジック・システムの紹介」

弊社は、内視鏡や顕微鏡などの販売を主たる事業としております。2年ほど前、医療安全を目的として、順天堂大産婦人科の武内先生、菊地先生のご指導の下、術中のあらゆる様子を記録する動画記録装置の販売を開始しました。内視鏡カメラや手術顕微鏡、手術室に設置されたカメラなどの映像と、心拍数や血圧といった生体情報を同時にリアルタイム記録するというものです。手術の映像記録は、今後も広がる可能性があると考えております。昨年度の厚生労働省科学特別研究では、手術室における安全性と透明性の確保に関する研究がなされており、手術室内の映像情報と生体情報の共有化の記録の実態状況の結果、手術の録画を実施しているのは、まだ半数以下の病院にとどまるとのことでした。この研究の背景には、2003年12月に厚生労働省が発した「厚生労働大臣医療事故対策緊急アピール」において、「手術の画像記録を患者に提供することによって、手術室の透明性の向上を図る」ことを促したことがあると考えております。

第26号コラム「企業経営とデジタル・フォレンジック」

第26号コラム:伊藤 一泰 理事(関西国際空港用地造成株式会社 参与)
題:「企業経営とデジタル・フォレンジック」

1 企業経営の構成要素とIT技術の進展
古い教科書を見ると、企業経営を形作っている構成要素として「ヒト・モノ・カネ」の3要素があげられている。即ち、優秀な人材を獲得し、的確なタイミングで需要に見合った投資を行い、必要な資金を市場や金融機関から安定的に調達することが旧来の企業経営のポイントであった。今は、これに「情報」という要素が加わり、そのウエイトも漸次高まっている。現代の経営者は、如何にして迅速的確に必要な情報を得るか、そして、集積した情報をどのように有効活用し、適切に管理するかということに注力しなければならなくなった。
一方、IT技術は、我々の想像を超えたスピードで革新を遂げ、高度で複雑なものとなってきた。このため、一般企業の多くが、社内のリソースだけではIT技術の進展に対応困難な状態となり、外部の専門家に頼ることとなった。このような状況下、少なからぬ企業において、「情報を活用し管理する」という「本来業務」まで外部の専門家に丸投げするのが当然のようになっている。勿論、経営者の中にもITに詳しい人もいるし、ITに長けていなくても、正しい経営判断が出来る経営者も多いが、ITの利用に伴う社内の管理体制が不備のまま、IT技術の進展に伴う防御的投資とも言える情報セキュリティ対策が後手に回っている企業はかなり多いと思われる。

第25号コラム「日本企業とマネジメントシステム」

第25号コラム:熊平 美香 監事(財団法人クマヒラセキュリティ財団 専務理事)
題:「日本企業とマネジメントシステム」

デジタル・フォレンジックにおける企業の説明責任、J-SOX法への対応、ISMSにおける認証と、IT化の時代になり、企業には新たな取り組みが求められるようになった。これらの要求は、その目的および手続きには違いがあるものの、企業にマネジメントシステムの構築を求める。日本企業におけるマネジメントシステムの確立について、期待を述べてみたい。

<マネジメントシステムの前提となる役割・権限・責任の明確化>
日本におけるバブル全盛期の1989年、米国を訪れた際に、2つの日本では考えられない顧客対応に憤慨した経験がある。一つは、円をドルに換金する目的のために、銀行を訪れた時のことだ。順番を待ち、テラー窓口に行き、500ドル相当の円を渡して換金を求めると、100ドル以上は自分の権限では対応できないと言われ、別な窓口を紹介された。それから、3つの窓口をたらいまわしにされた末に、やっと500ドルを受け取ることができた。もう一つは、購入した家具をメーカーに取りに行った時のことである。窓口は、17時まで。私が到着したのは、17時1分。目の前には、片付けをしている受付担当者がいるのに、「窓口はもうすでに終了した。」と言われ、私は、翌日出直すことになった。マネジメントシステムの話になると、いつも、この2つの出来事を思い出す。日本では考えられないような顧客接点ではあるが、二人のアメリカ人は、役割期待に忠実に答えていただけである。確かに、顧客視点に立ったおもてなしやサービスという観点からは評価できないが、これが、マネジメントシステムの前提としての役割期待および権限の明確化なのである。