第10号コラム「デジタル・フォレンジックの体系化とロカール」

第10号コラム:石井 徹哉 理事(千葉大学大学院 人文社会科学研究科 教授)
題:「デジタル・フォレンジックの体系化とロカール」

 

唐突ですが、「ロカール」をご存じでしょうか。

情報技術の方々は、当然だとか、そんなの「フォレンジック」に関係ないとか、「ロケール」が正しい読み方だとかいわれるかもしれません。ここで、私が「ロカール」といったのは、ソフトウエアのローカライズ等で問題とされる「ロカール(locale)」ではありません。伝統的なフォレンジックの学問的体系化をしたとされるエドモンド・ロカールのことです。ロカールは、「あらゆる接触が痕跡を残す」というロカールの交換原理を提唱したとして、また、指紋照合の方法を確立したとして伝統的なフォレンジックでは著名です(CSIや新・科捜研の女などのドラマで知った方もいるかもしれません)。

 

この言葉は、犯人はかならずどこかに痕跡を残しているのだけれども、それを見逃しているだけで、犯人の残した痕跡を科学的な手法を投入して明らかにし、証拠化することがフォレンジックの役割であるということも意味しています。おそらくこれは、サイバー犯罪においても妥当するのであって、よくいわれるサイバー犯罪における無痕跡性も、実は痕跡を見逃しているにすぎないのであって、科学的手法を投入することで痕跡が明らかになるのでしょう。ここに、デジタル・フォレンジックのひとつの役割があります。

第9号コラム「誰のためのフォレンジック?」

第9号コラム:和田 則仁 理事(慶應義塾大学医学部 外科 助教)
題:「誰のためのフォレンジック?」

 

多くの業界と同様に、医療の世界でも情報の電子化が進められています。電子カルテのように従来紙に手書きしていた記録が電子化されたり、伝票処理していたオーダー情報がオーダリング・システム導入により電子化されたりしています。また、心電図、レントゲンなどの画像データやビデオテープなど、従来アナログデータとして記録されていたものもデジタル化が進み、部門システムや個別の媒体でデジタルデータとして蓄積されてきています。

 

一方で近年、医療訴訟が増加していることは、多くの皆さんが日々の報道の中で実感していることと思います。法的争いの中で、診療録は重要な証拠となるわけですが、診療録は通常、医療機関で保管されていることから、医療側による改ざんの有無が争点となることがあり、訴訟の中で診療録の改ざんが認定されることも少なからずあります。例えば、東京女子医大の心臓手術事故では、元担当医の診療録改ざんが明らかとなり、証拠隠滅罪で罰せられるとともに、保険医登録取り消しの行政処分が行われました。

第8号コラム「デジタル・フォレンジック・コミュニティへの熱き招待」

第8号コラム:西川 徹矢 理事(明治安田生命保険相互会社 顧問)
題:「デジタル・フォレンジック・コミュニティへの熱き招待」

 

本年から理事として本協会に参画させていただきます西川です。警察庁、防衛省勤務を通じ、ITにかかわる仕事を担当し、本会とも設立当時から比較的近いところにおりました。したがいまして、私にとって、デジタルとフォレンシック(「科学捜査の」、「法医学の」)という語は聞き慣れたものでしたが、当初、2語が並び、デジタルフォレンジックとなると今一つよく分からないという印象がありました。それから、4年経ちました。時流と関係者の方々のご努力・熱意により、この言葉や概念も大いに普及し、市民権を得てきたと思います。

 

IT用語辞典(e-Words)にも、「不正アクセスや機密情報漏洩などコンピュータに関する犯罪や法的紛争が生じた際に、原因究明や捜査に必要な機器やデータ、電子的記録を収集・分析し、その法的な証拠性を明らかにする手段や技術の総称」(2005年8月20日最終更新)として掲載され、定着してきた観があります。