第208号コラム「ディスカバリの理念とハイテク技術」

第208号コラム:守本 正宏 理事(株式会社UBIC 代表取締役社長)
題:「ディスカバリの理念とハイテク技術」

昨今のディスカバリにおいては企業のもつ情報のほとんどが電子データであるということから、ディスカバリにはハイテク技術が必要不可欠になりました。その理由は書面情報がほとんどの時代に比較して電子データの情報量が圧倒的に多くなったことと、その取り扱いが高度に複雑になっていることによります。いまやハイテク技術がなくては、特に大量の電子データをもっている企業においては訴訟も戦えない時代になっています。

ここであらためてディスカバリの持つその理念について考察したいと思います。ディスカバリの理念の一つとして公平性が挙げられます。訴訟を有利に進める事ができるか否かはお互いが持っている証拠にも大きく依存していますが、証拠収集能力は、訴訟当事者の能力によって大きく差異が出てきます。例えば日本の訴訟制度では患者と病院間での医療訴訟等において組織力も専門的知識もない個人が病院側の証拠を提出させることは非常に困難であり、個人と病院では公平な裁判はかなり困難だと予想できます。その場合、仮にディスカバリ制度があれば、たとえ個人でも病院側に対して彼らが持っている証拠を強制力をもって自主的に提出させる事が可能になります。つまり公平性が保てる事になります。

第207号コラム「外部から侵入されている想定で情報セキュリティを考える」

第207号コラム:丸山 満彦 監事(デロイト トーマツ リスクサービス株式会社 パートナー、公認会計士、公認情報システム監査人)
題:「外部から侵入されている想定で情報セキュリティを考える」

デロイトではグローバルな情報セキュリティの調査を行っています。外部、内部からの攻撃に対して情報を保護している自信があると回答している企業も少なくありません。しかし、一方で外部から攻撃をされて技術情報や銀行口座番号やパスワードを盗まれた、といったニュースには事欠きません。私たちが、情報漏えいの可能性があるとして調査を依頼されることもあります。また、情報セキュリティ監査等で調査をしていると、情報が何者かによって外部に送信されている形跡を見つけることも少なくありません。そういう事実を伝えると、情報システム部門や事業部門の責任者は一様に驚きますが、多くの場合は、1年や2年、それ以上(ログが残っていないのでそれ以上のことはわからない)前に外部からITネットワークや、ヒューマンネットワークを通じて侵入されていて、ずっと気づかずにいるのです。

第206号コラム「医療イノベーションとデジタル・フォレンジック」

第206号コラム:秋山 昌範 理事(東京大学 政策ビジョン研究センター 教授)
題:「医療イノベーションとデジタル・フォレンジック」

最近、医療イノベーションという言葉が散見されるようになった。これは平成22年9月7日閣議決定された「新成長戦略実現会議の開催について」に基づき、産官民が協力して実用化に向けた医療研究開発の推進を始めることで、最新の医療を提供するためのイノベーションの一つである。この実現のためには、基礎研究段階から臨床応用への円滑な移行を担うトランスレーショナル・リサーチ(TR;橋渡し研究)という仕組みが必要になる。そこでは、研究者が薬剤や器具を用いて行ってきた基礎研究成果を基盤に、新たな疾患の予防や治療、診断等の開発を目指し人への臨床応用を研究することが重要である。すなわち、人へ臨床応用することが科学的に妥当であると、基礎研究である実験動物を用いた初期の非臨床試験の段階でも適切に確認しておくことが重要となる。特に遺伝子治療や再生医療といった先端生命科学研究の応用においては、従来の方法では効果や安全性を予測することが困難であり、臨床応用の妥当性を十分に説明するだけでなく、社会科学的見地から、臨床応用における被検者の尊重や社会的責任等、これまで以上の倫理的配慮を重要視されるようになる。

第205号コラム「フラッシュメモリーとフォレンジック」

第205号コラム:大谷 尚通 幹事(株式会社NTTデータ 技術開発本部 セキュリティ技術センタ シニアエキスパート)
題:「フラッシュメモリーとフォレンジック」

スマートフォンやタブレットが爆発的に普及し、個人や企業を問わず積極的に使われ始めています。私も、64GBモデルのiPod TouchとiPad2を愛用しています。前者の記憶容量の大部分は購入した音楽CDのデータで、後者の大部分は自分で撮影した写真データで占領されています。フラッシュメモリーの大容量化と低価格化がなければ、64GBモデルは購入できなかったでしょう。フラッシュメモリーが手軽に使えるようになった一方で、フラッシュメモリーへデータを書き込んだり、書き換えたりするたびに、気になっていることがあります。本コラムでは、フラッシュメモリーのフォレンジックについて、気になっている点をお話します。

■スマートデバイスの普及に潜む罠
スマートフォンやタブレット(以下、「スマートデバイス」という。)の企業内への導入が進んでいます。持ち運びやすく、機能も充実し、操作しやすいため、ノートパソコンに代わって、家庭内だけでなくビジネスへの活用も急速に進んでいます。スマートデバイスは、その計算能力やデータ蓄積機能などから、ほとんどコンピュータと変わらないと言われていますが、デジタル・フォレンジックの観点において、大きく異なる点があります。スマートデバイスは、小型軽量化するためにハードディスクではなくフラッシュメモリーを使用しています。そして、フラッシュメモリーには、ハードディスクでは基本的に発生しない、フラッシュメモリー特有の問題があります。スマートデバイスだけでなく、Solid State Drive(以下、「SSD」という。)もフラッシュメモリーを利用しています。SSDを搭載したコンピュータも、同様の問題を持っています。以下に、フラッシュメモリーについて、気になっている問題点4つと対策案1つをお話します。