第300号コラム「ビッグデータとリーガルテクノロジー」

第300号コラム:守本 正宏 理事(株式会社UBIC 代表取締役社長)
題:「ビッグデータとリーガルテクノロジー」

今やビッグデータという言葉を新聞やWEBの記事で見ない日はないくらい話題になっています。ビッグデータを適切に活用できるか否かが、ユーザー側にとってもサービスや技術を提供する側にとっても企業の将来を左右するのではと思われるほど重要性は増しています。最も、昨今の過熱ぶりは、一度は冷静になって収まるでしょう。しかし、その後は改めて、かつ冷静にあらゆる場面でビッグデータが活用されることは間違いありません。そもそも社会に存在するデータは全てがビッグデータと言っても過言ではないからです。(どれだけの容量がビッグデータと呼ぶべきかという議論はここでは省かせていただきます。)

ビッグデータ活用というと、大手IT企業からなるIT業界が技術的なソリューションを提供し、ビッグデータを持っている企業の事業に役立つ分析をするために活用するという事例が比較的よく見られますし、一般的にも知られています。しかし、我々のような「デジタル・フォレンジックが扱っている事案が実はビッグデータ解析事案だ。」という事を認識している人はほとんどいないのではないのでしょうか?

第299号コラム「INTERPOLが設立するデジタル・フォレンジック・ラボ」

第299号コラム:山田 晃 理事(株式会社サイバーディフェンス)
題:「INTERPOLが設立するデジタル・フォレンジック・ラボ」

INTERPOL(国際刑事警察機構)は、「異なる各国法制度の範囲内で、全刑事警察間における最大限の相互協力の確保と推進、及び、一般法犯罪の予防・鎮圧に効果があると考えられるあらゆる制度の確立・開発を図る(INTERPOL憲章第2条)」ことを目的として、世界各国の警察機関により構成される国際機関であり、フランス中東部の都市、リヨンに本部を置き、現在は190カ国が加盟しています。INTERPOLの活動は、「安全な世界構築のために各国警察機関を結び付ける」ことを目標に、犯罪情報の収集・交換、複数国にまたがる犯罪捜査促進のためのオペレーションの実施、各種会議・プロジェクトの開催、逃亡犯罪人の発見等のための国際手配書の発行等、広範囲にわたっています。

INTERPOLは、今年秋に、「INTERPOL Global Complex for Innovation(IGCI:シンガポール総局)」をシンガポールに設立・開設します。この中には、各加盟国のサイバー犯罪捜査部門と密な連携を図りながら彼らの活動を支援する「INTERPOL Digital Crime Centre(IDCC:デジタル・クライム・センター)」が設置されます。IDCCでは、国際レベルのサイバー犯罪と効率よく対峙するために必要なスキルやツールを、各加盟国のサイバー犯罪捜査部門に提供するなどの支援を行う予定です。

第298号コラム「匿名化情報という青い鳥」

第298号コラム:佐藤 慶浩 理事
(日本ヒューレット・パッカード株式会社 個人情報保護対策室 室長)
題:「匿名化情報という青い鳥」

第272号コラム「ビッグデータ時代におけるパーソナルデータを保護する義務と活用する責任」では、パーソナルデータを保護する法的・道義的義務に加えて、活用する社会的責任もあるという視点を紹介した。その中で個人情報の匿名化に関係する法的な課題を含めた基本的な考え方について触れたが、今回は匿名化について掘り下げる。それについて政府では、IT総合戦略本部にパーソナルデータに関する検討会を設置し、その下に、技術検討ワーキンググループを設置して匿名化について検討したので、その経緯と結果を紹介する。(以下の本文で「」で引用した文章は、政策会議の公開ページ http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/pd/index.html に掲載されているものである)

上位の検討会から下位のワーキンググループへの命題は、「合理的な水準まで匿名化を施されたパーソナルデータについて、法的に通常の個人情報とは異なる取扱い(例:第三者提供に関する同意を不要とする一方、提供先事業者に対して法的な責任を課す等)とすることの可否について検討すべき」(第1回検討会資料3-2)というものであった。これは、すなわち、個人情報を匿名化する加工方法を定めることにより、その加工された情報を、先述のコラムで紹介した第三者提供の制限に該当しない情報として取り扱うことでパーソナルデータの利活用を促進することが狙いであった。そのようなパーソナルデータ利活用にとって幸せの使いである青い鳥を探すワーキンググループが発足したのである。

第297号コラム「技術が変われば、法も変わる…べき?」

第297号コラム:須川 賢洋 理事(新潟大学大学院 現代社会文化研究科・法学部 助教)
題:「技術が変われば、法も変わる…べき?」

今回のコラムの表題でもある「技術が変われば、法も変わる…べき?」の問いの答えはもちろん「Yes」である。むろん時には「No」の場合もあるのだが、それはまた次の機会に書かせていただくとして、今回は実態と合わない事例を著作権法の中から2、3ほど紹介させてもらえればと思う。

先日(2013年12月13日)の報道で、政府が「個人の音楽・映像のクラウドサービスへの保存規制を2014年度中に見直す」ということを表明した。実はこれは2007年(平成19年)5月に東京地裁で出されたある判例を念頭に置いている。「myuta事件」というのだが、これは『「自らが購入した音楽CDをネット上のファイルサーバ上でMP3に変換して預け、必要な時に自分の携帯電話にダウンロードしてどこででも聞けるようにするという事業」が著作権を侵害する』としたものである。ちょっと考えるとお分かりになると思うが、これは現在で言うところのクラウドの個人ストレージと同じサービスになっている。
しかしながら、この判決が出された頃には、もう既に携帯電話のメモリ容量が莫大になりギガ単位のストレージをローカル個々に持つようになっていた。結果としてこの事業自体の魅力も無くなり、被告側も控訴に至らなかったわけである。結果として、この判例だけが確定して一人歩き始め、ともすれば「現在当たり前に行われている数々のクラウドサービスが、過去の判例に照らし合わせるとひょっとしたら違法になるかもしれない?」という現実との不整合が生じてきたのである。それ故、このようなことに関して法律をはっきりさせる必要が出てきたことが、今回の政府表明がなされた理由である。

第296号コラム「児童ポルノの拡散をいかに防ぐか」

第296号コラム:石井 徹哉 理事(千葉大学大学院 専門法務研究科 教授)
題:「児童ポルノの拡散をいかに防ぐか」

1 現在開会中の国会に提案されている児童買春、児童ポルノに係る行為等処罰及び児童の保護に関する法律の一部を改正する法律案では、児童ポルノの所持又はこれに係る電磁的記録の保管(以下「児童ポルノの所持等」とする)が禁止され(6条の2)、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持等を犯罪化(新第7条1項)することが提案されています。それとともに、同法律案では、プロバイダや掲示板管理者等インターネット関連事業者一般に対して、児童ポルノの拡散防止のために、捜査機関への協力、その管理権限に基づき児童ポルノに係る情報の送信を防止する措置その他インターネットを利用したこれらの行為の防止に資するための措置を講ずる努力規定(14条の2)を設置している。これは、附則において、インターネットによる児童ポルノに係る情報の閲覧制限について、3年をめどとして、技術開発の状況等を勘案しつつ検討を加え、その結果に基づいて必要な措置が講じられるものとしている(2条2項)ことから推察すると、ブロッキングを含むものと想定しているものでしょう。