第237号コラム「遠隔操作ウィルス事件が残した宿題」

第237号コラム:小向 太郎 理事(株式会社情報通信総合研究所 法制度研究グループ 部長 兼 主席研究員)
題:「遠隔操作ウィルス事件が残した宿題」

 遠隔操作ウィルスによる犯罪予告が誤認逮捕を生んだ事件には、多くの人が衝撃を受けたと思う。IDFコラムでは、既に本研究会副会長の安冨潔教授が取り上げられ、捜査機関のリテラシーを上げる必要性について述べられている。適確な指摘であり今後取り組むべき課題であることは疑いがない。それはそれとして、この事件の報に接してから、何となく落ち着かない気分を捨てきれないでいる。本件によって、今まで自分が十分考えてこなかった課題が、改めて問いただされているのではないかと感じるからである。

 まず、こういう言い方をするとお叱りを受けるだろうが、今回問題となったのは、ある種のたちが悪い「いたずら」である。単純な情報発信のみで成立する愉快犯であるが故に、証拠もネットワークとPC上に残されたデジタル情報に限られている。もし、金銭的な利益を得たり、人の生命身体を傷つけたりしていれば、犯人を特定する手がかりはもっと多くなったはずだ。冷静に考えれば、こうした情報発信を全て取り締まるのは、もともと難しいことが分かる。もちろん、深刻な被害につながる犯行予告があることは否定できない。しかし、取り締まりの対象をどのような範囲にすべきかは、議論があり得るであろう。

第236号コラム「第9回デジタル・フォレンジック・コミュニティ開催に向けて」

第236号コラム:丸谷 俊博 理事・事務局長 (株式会社フォーカスシステムズ 新規事業推進室 室長)
題:「第9回デジタル・フォレンジック・コミュニティ開催に向けて」

来る12月10日(月)、11日(火)の二日間、第9回目となるデジタル・フォレンジック・コミュニティ2012が開催されます。第9回となる今回は、昨年同様に参加者実績を反映して募集定員を260名に増やしておりますが、それを上回る参加申込状況となっています。また、展示企業も増えましたので展示室も1室増やしました。

今回のテーマは「企業活動のグローバル化に伴うデジタル・フォレンジック基盤の確立 – 今、必要なリスク対策を考える – 」とし、これらに関連した最新情報及び事例や適用技術、関係法令等の紹介と企業等の対応方法を示唆する内容で構成しておりますので各講演や研究会は、参加者の方々にとりまして有益なものとなると思います。
また、今年はメインテーマに関連して米国e-ディスカバリー協会からの講師もお招きして最新情報をお話し頂く他、日本と韓国や台湾との間での国際的証拠開示の現状等もご紹介致します。

第233号コラム「e-filingを実現する上での課題」

第233号コラム:町村 泰貴 理事(北海道大学大学院 法学研究科 教授)
題:「e-filingを実現する上での課題」

 我が国においてはオンライン申立てを可能とする規則が法律および裁判所規則に用意されている。民事訴訟法132条の10に規定されたのみならず、来年1月1日から施行される新しい非訟事件手続法42条および家事事件手続法38条でも、上記の民訴法の規定を準用して、オンライン申立てを可能にしている。

 しかし、実際には、督促手続を除けば、ほとんど利用されていない。オンライン申立て・送達の活用は、記録のデジタル化も含め、メリットが大きい反面、従来の実務を大きく変更する可能性を秘めており、メリットを活かすために克服すべき課題も多い。

 民事訴訟に限らず、より広くデジタル技術の訴訟手続への応用という観点からは、指宿信教授を中心とする研究グループ「司法制度改革と先端テクノロジィ」研究会(http://www.legaltech.jp)が活発な研究活動を行い、その成果は法律時報76巻3号(2004年)に『情報技術と司法制度改革:正義へのユビキタス・アクセスとIT革命』と題する特集にまとめられていた。
 この研究グループには筆者も一部参加し、2009年には「eサポート裁判の可能性 -民事訴訟の電子化を中心に-」と題するシンポジウムをコーディネートした。その成果は上記研究会のウェブサイトに掲載されている。