第187号コラム「第8回デジタル・フォレンジック・コミュニティのテーマに想う」

第187号コラム:守本 正宏 理事(株式会社UBIC 代表取締役社長)
題:「第8回デジタル・フォレンジック・コミュニティのテーマに想う」

昨年、尖閣諸島沖で発生した中国船による巡視船への衝突を撮影したビデオの流出事件、検察によるFD改ざん、大相撲八百長事件、直近だと大企業による資産の不正利用等、さまざまな事件が発生するたびに、デジタル・フォレンジックが注目されてきました。しかし、デジタル・フォレンジックがどのような場所で活用されているのか等の実態は、意外と知られていないように思います。

そこで、実際にどのような場面でデジタル・フォレンジックが活躍するのかをまずご紹介したいと思います。

1 不正調査

会社で使用しているパソコンやサーバーにある電子データを解析することによって、誰が、いつ、どのような手段で、何をしたか?なぜ発生してしまったのか?あるいは実は発生していなかったのか?などを分析し、今後の方針を判断し、適切な対応をして危機を乗り越える支援をする際に使われます。

2 米国民事訴訟
米国を係争地とする訴訟においては、相互に証拠を開示するディスカバリという手続きがあります。訴訟に関係のある人が持つ電子データ等のドキュメントを収集し、ハイテクを使い分析・抽出します。さらにその抽出したデータを弁護士・パラリーガル等によって実際に人の目で判断するドキュメントレビューを行い、最終的に証拠物を相手方に提出します。係争の種類としては、知財訴訟、PL訴訟、契約上のトラブル、労務的な問題など多岐にわたっています。

第186号コラム「第8回デジタル・フォレンジック・コミュニティ開催に向けて」

第186号コラム:丸谷 俊博 理事・事務局長(株式会社フォーカスシステムズ 新規事業推進室 室長)
題:「第8回デジタル・フォレンジック・コミュニティ開催に向けて」

週明けの12月12日(月)、13日(火)の二日間、第8回目となるデジタル・フォレンジック・コミュニティ2011が開催されます。第8回となる今回は、昨年迄の参加者実績を反映して参加募集定員を260名に増やしましたが、それを上回る300名超の参加者となっています。急遽、会場の椅子席も増やしましたが会場内が混み合うことをご容赦下さい。

これは、昨年秋以降の尖閣ビデオ流出事件、FD改竄事件、大相撲八百長事件等から始まり、今年の東日本大震災で水没損傷を受けたデジタルデータの復旧や最近ではオリンパス不正経理や大王製紙背任事件、そして企業や衆参議両院及び省庁へのサイバー攻撃事案等への対応でもデジタル・フォレンジックの適用・使用が肝要となってきた趨勢を反映しているものと思います。デジタル・フォレンジックへの関心が高まり高度情報化社会のインフラとして適用や導入が増え、啓発が進むことは本研究会の活動目的に合致しておりますので大いに歓迎すると共に研究者や実務者が増えてゆくことを期待しております。

この意味からも今回のテーマとした「実務適用が広まったデジタル・フォレンジック-事例・実務紹介から学ぶ-」は時宜に適したものであり、招請した各講師及び「技術」「法務・監査」「医療」の各研究会での講演及び質疑・討議内容は、参加者の方々にとりまして有益なものとなると思います。また、企業展示も例年通り行いますので最新のデジタル・フォレンジック機材やデジタル・フォレンジック向けソフト製品等についてご覧頂き、各方面・分野への適用・導入検討にお役に立てて頂きたいと思います。

第184号コラム「図上演習について」

第184号コラム:舟橋 信 理事(株式会社セキュリティ工学研究所 取締役)
題:「図上演習について」

先の東日本大震災では、多くの方々が亡くなられた。岩手県釜石市では、地震直後の津波で大きな被害が発生したが、市内の小中学生の生存率は99.8%に達することが報道されている。その要因として、同市の防災・危機管理アドバイザーの片田敏孝群馬大学教授による小中学生を対象とした大津波に備えた教育、避難訓練等により身に就いた判断が小中学生の生命を守ったのである。

発生すれば大きな犠牲が生じるが、人の生涯でほとんど遭遇することのない大規模な災害などへの対処は、演習を通じて経験し、前もって対処方策を考察しておけば、被害を最小化することに寄与する。
このような観点から、慈恵会医科大学の浦島准教授を委員長とするボランティアの実行委員会(委員長を含め9名)主催により、平成19年より、バイオセキュリティ分野の図上演習を毎年開催している。今年は5回目の開催となる。毎回100人~300人の官公庁、警察、消防、自衛隊、医療機関、マスコミ、重要インフラ・リスクコンサルタント、製薬会社等の民間企業の方々、また、当研究会会員の方々にも御参加いただいている。

第183号コラム「サイバー攻撃と情報保有者の責任」

第183号コラム:小向 太郎 理事(株式会社情報通信総合研究所 法制度研究グループ 部長 兼 主席研究員、IDF「法務・監査」分科会主査)
題:「サイバー攻撃と情報保有者の責任」

わが国でも、サイバー攻撃が急速に注目を集めています。海外では、以前から重要インフラへのサイバー攻撃の脅威が指摘されており、昨年には実際にインフラ設備を制御するシステムを狙ったウィルスなどが話題になりました。

これらの報には接しながら、国内ではまだ具体的な攻撃があまり話題になっていませんでした。しかし、この秋に三菱重工業等の国防関連の製品を扱う企業に対する大規模かつ組織的なサイバー攻撃が発覚し、国家機密に当たる情報も漏洩した危険があるとして大きな注目を集めました。その後、衆議院や政府機関への攻撃も報じられており、政府も2011年10月7日に「情報セキュリティ政策会議」(議長・藤村修官房長官)を開いて、情報共有など官民連携の強化を検討しています。

企業による情報漏洩について最近、マスコミ等の論調が微妙に変化しているように感じます。従来、個人情報等の漏洩がおきた場合、企業はひたすらごめんなさいでした。しかし、組織的な標的型攻撃は通常のセキュリティ対策では防ぎようがないという認識が急速に浸透しているように思います。