第172号コラム「サイバー犯罪関連法案について」

第172号コラム: 安冨 潔 副会長(慶應義塾大学大学院 法務研究科 教授、弁護士)
題:「サイバー犯罪関連法案について」

1 はじめに
すでにご承知のとおり、「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」(平成23年法律74号。以下「本法律」という。http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00025.html )が2011年6月17日第177回国会において成立し、同月24日公布されました。
本法律は、コンピュータ・ネットワークが社会的基盤として機能している今日の社会において、いわゆるコンピュータ・ウイルスによる攻撃や、コンピュータ・ネットワークを悪用した犯罪など、サイバー犯罪が多発するとともに、証拠収集等の手続の面においても、コンピュータや電磁的記録の特質に応じた手続を整備する必要が生じたことから、制定されたものです。
サイバー犯罪に関する条約(Cybercrime Convention、以下「サイバー犯罪条約」という。)については、欧州評議会において2001年11月8日採択され、2001年11月23日に我が国もこれに署名し、2003年4月に国会において承認された( http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/treaty159_4.html )ものの、国内法整備がなされずにいたものです。本法律の制定によって、近いうちに我が国も批准するものと思われます。
すでに石井教授のコラム(第161号「サイバー犯罪に関する法整備」2011年6月16日)で紹介され、鋭いご意見が述べられているところですが、今回は、あらためて本法律の罰則規定についての概要をご紹介したいと思います。

第171号コラム「スマートフォンやタブレット型端末の情報セキュリティについて思うこと」

第171号コラム:澤田 忍 幹事(株式会社NTTデータ 技術開発本部 セキュリティ技術センタ)
題:「スマートフォンやタブレット型端末の情報セキュリティについて思うこと」

■スマートフォンやタブレット型端末の台頭
昨年、自宅PCの調子が悪くなり、次第にiPadをメインで利用するようになった。
電源ボタンを押せばすぐ起動し、手のひらやひざの上、どこでも持って行って使える便利さ、直感的な操作、見やすい画面。
非常に多くの情報とネットワークで結ばれ、新聞や電子書籍を読んだり、SNSでコミュニケーションし、様々な利用用途を実現している。
スマートフォンやタブレット型端末(以降、スマートデバイスと呼ぶ)は、通話やメールだけでなく、電子書籍やゲーム、SNS、企業システム接続、営業用ツール、決済、GPS、カメラ、ICカード機能など、様々な利用方法を実現している。AR(Augmented Reality)のような、PCでは考え付かなかったような興味深いアプリケーションなど、使い方次第で無限に利用用途が広がるデバイスだと感銘を受けた。今年度、スマートデバイスはPCの売り上げを上回ると予想されている。

第170号コラム「処方せんの電子化に向けた考察」

第170号コラム: 中安 一幸 幹事(厚生労働省 政策統括官付社会保障担当参事官室 室長補佐、東北大学大学院 医学系研究科 客員准教授、IDF「医療」分科会主査)
題:「処方せんの電子化に向けた考察」

平成23年度総務省健康情報活用基盤構築事業の一つとして、香川県において「処方せん情報の電子化」にかかる実証事業を行うこととなり、その実行委員長を拝命した。

これを引き受けたのは、2つのことを考えたからである。

まず1点目には、他国も構築を目指しているEHRというものに、いずれも政府ないしは国営の保険者等が主体的に関与をしていることに較べて、我が国ではいまだ、誰が何のためにそれを作り、どう維持していくのか、つまり医療・健康にまつわる制度や社会基盤としてどのように形作っていくのかということにあまり議論が及んでいないことが挙げられる。
我が国は、国民皆保険をはじめ国民の医療へのフリーアクセスを制度の基本として堅持してきたところであり、よい医療が安価に提供できている制度であると、この点に関しては国際的な評価も決して低くはない。
それでも我が国の医療制度は急激に進行する少子高齢化と相俟って、さまざまな解決すべき課題を抱える。

第169号コラム「あなたのデータはどこにある?」

第169号コラム: 松本 隆 理事(ネットエージェント株式会社 フォレンジックエバンジェリスト)
題:「あなたのデータはどこにある?」

無償で提供されるクラウドやスマートフォンのサービスには、サービス事業者に対してユーザー自身のデータを「対価」として提供することによって、利用を許されているものが数多くある。

「タダほど高いものはない」という警句がそのまま当てはまりそうな構図だが、これらの無料サービスは既にネット上でのコミュニケーションにおいて、必要不可欠なプラットフォームとなっているので、利用しないという選択肢はあまり現実的ではない。今回のコラムでは、これらの無料サービスを利用する上で、デジタル・フォレンジックの観点から筆者が気になっている「データの所在」の問題について述べたいと思う。

クラウドやスマートフォンで提供されるサービスを利用する理由のひとつとして、いつでもどこでも、環境に依存せずにサービスを受けられる便利さがある。
例えばユーザーが自宅のコンピュータで作業したデータに対して、クラウドのサービスを通じて外出先からスマートフォンでアクセスできる。スマートフォンでチェックした友人からのメッセージを、自宅のPCでも確認できる・・・。
これらの便利なサービスを実現するためには、端末間での「データの共有」「同期」「自動化」が不可欠である。いつでもどこでも環境に依存せずにサービスを享受できるという利便性は、複数の環境で同期の取れた同じデータを共有することで実現している。
クラウドのサービスは、データの同期と共有のためのプラットフォームと、データを大量に貯めておくためのストレージを提供する。そして、ユーザーに環境の違いを意識させることなく、ストレスなくサービスを利用してもらうために、データの同期と共有は多くのケースにおいて、自動的に行われる。
この同期と共有の自動化は、見方によってはサービスを利用することによって、データがユーザーの意識的なコントロールを離れて、共有対象となる環境に拡散しているともいえるだろう。
このデータの拡散について、ふたつ具体的な例を挙げたい。
ひとつはネットワークストレージサービスのDropbox、もうひとつはGoogleの連絡先(アドレス帳)だ。

第168号コラム「震災後の働き方とルールの変化」

第168号コラム: 藤村 明子 幹事(NTT情報流通プラットフォーム研究所 セキュリティマネジメント推進プロジェクト セキュリティSEDP (情SP SED))
題:「震災後の働き方とルールの変化」

東日本大震災により被害を受けられた皆様におかれましては、心よりお見舞い申し上げますとともに、被災地におかれましては、一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。

地震が発生した午後2時46分は、平日(金曜日)の午後であったことから、社会人の多くの方が、仕事中に揺れを経験されたことでしょう。
首都圏では、地震直後から被害状況が明らかになるにつれて、交通手段を中心に様々な混乱が生じたことから、職場や臨時の施設で夜を明かしたといういわゆる「帰宅難民」が大勢出たことも既に知られています。
交通網だけでなく各種通信網もしばらく混乱が続いたことから、家族、親族、仲間と即座に連絡が取れずに、連絡手段が回復するまで心を痛めていた方も多くいらしたことと推察いたします。
筆者は外出先にいた関係で、強めの余震が続く中、どのようにして身の安全を確保しようかとあちこち右往左往しました。筆者の環境では揺れの直後から、携帯電話その他のネットワークが早々に使用できなくなり、公衆電話もなかなか見つからなかったため、その結果、職場や家庭へ安否確認の連絡ができたのは地震発生から数時間後となりました。
今回、こういった経験をされた方は大勢いらっしゃると思います。