第140号コラム「個人情報を大切にする仕組み」

第140号コラム:秋山 昌範 理事(東京大学 政策ビジョン研究センター 教授)
題:「個人情報を大切にする仕組み」

 現在の国民皆保険は、丁度半世紀前の1961年(昭和36年)に達成された。その後も、日本の医療は機能分化せず、長期間病院と診療所の区別しかなかった。本来ならそこから福祉的な分野の介護と、予防医学的な部分、クリニック的な部分、専門医療的な部分という4つのドメインに分化していくことを考える方策も考えられたが、政府がとった政策は、医療費抑制のために総病床数を減らそうというものだった。一方、病院には、自治体病院、国立・私立病院などがあるが、特に自治体病院では、その頃、多くの院長に権限がなかった故に経営感覚も不足しており、時間単価の高い医師に雑用が多いという現状であった。近年の医療制度改革で、経営学的に生産性を上げる必要が増加した。そのために、医師に事務的なことを受け持つクラーク(事務員)をつければよいとよく言われる。しかし、クラークをつければ、単純に生産性が向上するというものでもない。医療は市場経済ではなく、事実上、計画経済によって運営されているからである。このような医療制度の見直しが必要になっている中で、効率性のみではなく、医療の質的維持が図られる仕組みも重要である。そのためには、正しい医学的評価や医学研究ができる必要がある。

第139号コラム「データ分析を使った不正発見手法」

第139号コラム:丸山 満彦 監事(デロイト トーマツ リスクサービス株式会社 パートナー、公認会計士、公認情報システム監査人)
題:「データ分析を使った不正発見手法」

 内部統制には予防的統制と発見的統制があるが、今回は発見的統制に関する話題である。発見的統制は、リスクが発現しているかどうかを記録(ログ)を検査して発見し、発現したリスクの影響を最低限にするための対策である。一般には予防的対策でリスクの発現そのものを抑えるほうが効果的であるが、費用対効果の面で予防的対策よりも発見的対策のほうが効率的な場合もある。このような次善の策としての発見的対策というのは、あらかじめ想定されるリスクが発現していないかどうかを発見するということになる。たとえば、「通常時には深夜0時から朝の6時にサーバに管理者権限でアクセスすることはないが、緊急時にはそのような場合もありえる」という場合には、「通常時においては深夜0時から朝の6時にはあらかじめ管理者権限を利用できないように権限を設定し、予防的対策をし、緊急時には上長が承認した上で管理者権限を利用できるようにする。」という対策も理論的には考えられるが、運用上は難しいのは明白である。このような場合には、「深夜0時から朝の6時に管理者権限を利用した場合には、上長にアラートを上げ、事前の作業承認と一致していることを確認する」といった、発見的な統制が使われることになる。

第137回コラム「携帯電話フォレンジック:緊急通報における携帯電話の発信位置表示」

第137回コラム:舟橋 信 理事((株)NTTデータ・アイ 顧問、IDF理事)
題:「携帯電話フォレンジック:緊急通報における携帯電話の発信位置表示」

 携帯電話に関するデジタル・フォレンジック(以下「携帯電話フォレンジック」と言う。)と言えば、携帯電話内部に蓄積されている電子証拠を解析することを思い浮かべますが、携帯電話事業会社に蓄積されている通信記録や携帯電話の位置を特定することも携帯電話フォレンジックと言えます。

 本稿では、緊急通報、すなわち110番(警察)、118番(海上保安庁)又は119番(消防)を発呼した携帯電話の位置特定について、筆者も深く関わって参りましたので、日米におけるこれまでの経緯について述べておきたいと思います。

 なお、上記で「携帯電話フォレンジック」と表現しておりますが、iPhoneやiPad等の携帯端末機器やWi-Fiなどの普及を考慮すると、「モバイルフォレンジック」と総称すべきかと思います。

 1996年6月12日、米国連邦通信委員会(FCC)は、911通報、すなわち米国の緊急通報機能の強化について、次の2段階で実施することを決定しました。